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2014/06/14 (Sat) 21:36

草場(北)の社宅跡

今回は草場池の北側にあった社宅街のうち、建物が解体され跡地の再利用もなされていない2つのブロックについてご紹介します。まず前回も使用したこちらの画像を。

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(1974年撮影 / 国交省の国土画像情報より引用・加工)

前回紹介した社宅街からそう離れていない場所、青線で囲った部分が今回の社宅跡です。いずれも山田炭鉱の社宅としては標準的な木造平屋の2軒長屋の建物が建っていたようです。



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まずは草場池の西岸にあった社宅跡から。かつて山神社があった場所(現 草場区集会所)のすぐ近くで、道路を挟んで池側に4棟、山側に1棟と計5棟の社宅がありました。国土地理院の航空写真で確認したところ1964年5月から1966年7月の間に整備され、1995年5月までに全て解体されたようです。その後道路の改良によって山側の棟の跡地が大きく削られ、現在に至っています。

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道路より一段高い場所に残る社宅跡地。

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区割りの跡と思われる松岩の低い石垣が残りますが、その他には特に遺構は見られませんでした。

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道路との境目にあった「麻生セメント」と刻まれた用地杭。



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そして個人的には長年気になっていた、草場池の北側にあった社宅跡。前回紹介した社宅街と同じく最も早い時期に整備されていたようですが、1974年時点で既に建物の姿はなく、跡地もすっかり草木に覆われてしまっています。配水池のあった丘の南側に5棟、池に突き出した部分に6棟の社宅が建っていたようです。

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写真右が草場池。現在一帯には森林が広がっているため、かつて社宅があったような雰囲気はほとんど感じられませんが…

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下の廃道沿いに木の柱が2本立っており、その奥にも道が続いています。どうやら門の跡のようですね。

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いったん前回の社宅街に近づき、ここから廃道に入ります。

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門の前。ここから先程のガードレールまでの道路は1969~1974年に整備された区間のようで、それ以前にはここにも3棟の社宅が建っていました。

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門柱。炭鉱で使用されていたものと同じ木材のようです。

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奥へと続く道は舗装こそされていないものの、草が刈り取られきれいに保たれています。

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左手には苔むした松岩の石垣。

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右手は鬱蒼とした竹林。ここが池に突き出した部分で、社宅跡はこの中にひっそりと残っています。

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建物は解体され区割りすら判然としませんが、木々に混ざって人工物がちらほらと見えますね。

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足元に注意しつつ近づきます。

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煉瓦の基礎とコンクリの構造物。

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台所の跡でしょうか。

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池に近づくにつれ地面が低くなっており、当時は段状の構造になっていたようです。

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段差を斜めに流れ落ちる松岩の側溝と、その脇に残る和式便器。流石にまじまじと観察する気にはなれませんが、これも中々の年代モノということになります。

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現在は木々に遮られていますが、すぐ目の前には草場池の水面が広がっています。当時は結構良い景色だったんでしょうね。

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水回りにありそうな水色のタイルなんかも残っていました。ざっと見て回っただけなので、まだ他にも色々あるかもしれません。

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丘の南側にあった5棟の跡地は畑として活用されています。

この一帯は以前から航空写真を見てから気になっていたので、念願かなっての探索となりました。実は中学生の頃には門の前まで来ていながら少し入ったところでビビッて引き返していたため、ある意味で雪辱を果たせた(?)と言えます。当時は炭鉱の社宅跡だという認識はなく、単なる「何かが建っていた跡」への関心に突き動かされた形でしたが、まあその辺りは今となってはどうでも良いことでしょう。

ちなみにここの社宅だけが閉山後すぐに解体された理由についてはよく分かりません。ひょっとしたらここに住んでいた方々は他所の炭鉱に移られたのでは…などと考えもしましたが、山田炭鉱の閉山後に残った麻生の炭鉱はというと嘉穂郡桂川町の吉隈炭鉱(1969年閉山)の一鉱のみ。当時すでに石炭産業自体が斜陽化の一途を辿っていたので、この説は正直微妙です。こういった事情は当時住んでいた人にでも聞かないと知りえない所ですが、気になりますね。


(おまけ)

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門からすぐ入ったところで、左の茂みから影が。犬の散歩をしていたおじさん(前回訪問時に配水池や山神社について教えて頂いた近所のおじさん)が奥に歩いていった直後だったので「また誰か散歩してんのかな~」などと一瞬思いましたが、明らかに人間とは違う異形の存在だったので二度見。なんと野生のシカでした。

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上の写真を拡大。恐らくおじさんが通り過ぎるのを茂みの中で待っていたのでしょう。私も思わぬ遭遇に驚きましたが、向こうも同じくビックリした顔をしています。

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お互い一瞬だけ固まった後、池の方に向かってノソーノソーと歩いて行きました。続いて親子か兄弟と思しき2頭も登場し、順番に通過。写真は3頭目で、間の1頭は撮れませんでした。野生のシカを見るのは恐らく人生初のことで、なかなか貴重な体験となりました。

ちなみに草場池は釣りスポットとして有名なようでネットでも各所で紹介されているのですが、こちらのブログでもシカとの遭遇(?)が綴られていました。この一帯から人間が立ち去って40年以上が経過した今、かつての社宅街はシカの生活圏へと変貌しているようです。



写真の撮影年月は以下のとおり。

2013年3月)022
2014年2月)023~025
2014年3月)026~045

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