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2013/03/26 (Tue) 15:51

九州大学箱崎キャンパスの近代建築

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九州大学箱崎キャンパスの近代建築

◆はじめに
福岡市東区箱崎6丁目にある九州大学箱崎キャンパスは、九州帝国大学・同工科大学の設置に伴い1911(明治44)年に開設されました。キャンパス内には大学設置以来の長い歴史を物語るかのように、大正から昭和戦前・戦中にかけて建てられた近代建築が数多く残っています。特に同時期の建物があまり現存していない福岡市において、当キャンパスの建築群は単なる歴史的建造物として以上に大きな価値を有しているといえるでしょう。

しかしご存知のように、当キャンパスは福岡市西区と糸島市に跨る伊都キャンパスへの2019(平成31)年までの移転が予定されており、これらの建築群の将来が危ぶまれています。そんな中で2012年、移転後の取扱いについて方向性を探るべく、主要な近代建築を対象として有識者による調査が行われました(外部リンク1)。これによって保存活用への道が開けたものもあれば、逆に解体撤去が現実味を帯びたものもあり、建築群の将来は移転計画が進むにつれて徐々に明暗が分かれ始めています。

◆当ページについて
私個人としては一つでも多くの近代建築が解体を免れることを願っていますが、計画そのものに口を挟めるような立場にはない一市民なので現実には傍観するのみです。しかしながら一種の記録として残すこと、あるいは誰かの記憶に留めることの手助けになればと思い、拙ブログではこれら建築群を紹介する記事を作成してきました。当ページは各記事へ移動する目次としての機能を想定したもので、前述の調査結果による分類(外部リンク2)などをもとに、各建築の写真と記事へのリンクを一覧形式で表示しています。

建築物または工作物の名称については基本的に大学のキャンパスマップ(外部リンク3)に従い、括弧内に建築当初の旧名称と竣工年を併記しました。既に閉鎖されている建物についても、その旨を記述しています。なお、記事の終わりに各建築がキャンパス内のどこに存在するかを示すマップを掲載しています。

(外部リンク1)…九州大学箱崎キャンパスにおける近代建築物の調査ワーキンググループの評価報告(PDF)
(外部リンク2)…箱崎キャンパス跡地の近代建築物取扱いの方向性について(PDF)
(外部リンク3)…九州大学:箱崎地区



<主な近代建築物・工作物>

◆グループA(九州大学を象徴する極めて評価の高い近代建築物)
…方向性は “保存・活用を前提に、運営主体を探っていく” となっており、移転完了後も残る可能性が高いです。

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正門

(同上/1911年?)

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正門門衛所

(同上/1914年)

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本部第一庁舎

(工学部第一新館/1925年)

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旧工学部本館

(工学部本館/1930年)
 
◆グループB(比較的評価の高い近代建築物)
…方向性は “安全性に係る調査を継続し、運営主体による費用対効果を考慮して、取扱いを検討する” となっており、諸問題をクリアできれば保存の可能性も見込めるといえます。

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旧船舶海洋工学実験室

(工学部造船学実験室/1921年/閉鎖)

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農学部実験室

(農学部汽罐室/1921年)

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本部第三庁舎 大学評価情報室

(工学部第二新館/1925年)

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留学生センター分室

(農学部発電所/1929年)

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熱帯農学研究センター

(演習林本部/1931年)

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附属図書館付設記録資料館 産業経済資料部門

(法文学部演習室/1937年)

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農学部6号館

(農学部農芸化学本館/1938年)

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砂防工学実験室

(同上?/1938年)

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旧航空工学教室

(工学部航空学教室/1939年/閉鎖)

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建築学教室

(同上/1960年)

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創立五十周年記念講堂

(同上/1967年)
 
◆グループC(安全性に問題有りと認められる近代建築物)
…いずれも耐震性の不足や構造体の劣化が見られるRC造建築で、方向性は “利活用は困難と思われることから、ファサード保存・記録保存等を含めて、取扱いを検討する” となっています。つまり仮に現物保存が叶ったとしても、恐らくは外壁や玄関などの一部に留まるということでしょう。

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旧道路工学実験室

(工学部河海工学実験室/1925年/閉鎖)

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旧応力研生産研本館

(法文学部本館/1925年/閉鎖)

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附属図書館付設記録資料館書庫

(法文学部附属図書館及書庫/1925年)

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旧応用物質化学機能教室

(工学部応用化学教室/1927年/閉鎖)

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アドミッションセンター

(法文学部心理学教室/1927年)

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グラミン・クリエイティブ・ハウス

(工学部高周波電気及電子工学実験室/1931年)

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旧工学部高温度化学実験室

(工学部実験室/1932年/閉鎖)

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理学部原子核実験室

(同上/1944年)
 
◆その他
…前述の調査では対象となっているが、キャンパス敷地外に存在する等の理由でグループに分類されていないもの。取扱いの方向性は不明。

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松浜厚生施設 生活協同組合本部

(学生食堂/1928年)

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農学部庭園

(構成見本園/1932年)

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第三学生集会所「三畏閣」

(同上/1937年)


<その他の近代建築物・工作物>

調査の対象となっていない近代建築や、個人的に気になった建物など。
 
◆大正~昭和戦前・戦中

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農学部正門

(同上/1923年?)

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旧船舶海洋工学実験水槽上屋

(工学部造船学実験水槽上屋/1924年?/閉鎖)

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旧変電室倉庫

(工学部変電室倉庫/1927年/閉鎖)

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農学部2号館別館

(農学部農林生物物理研究棟/1927年)

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掲示板

(同上/昭和初期?)

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貝塚門門衛所

(同上/1935年)

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旧振動実験室

(工学部振動実験室/1938年/閉鎖)

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旧ゲッチンゲン風洞実験室

(工学部ゲッチンゲン風洞実験室/1939年頃?/閉鎖)
 
◆昭和戦後~昭和中期

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九州大学出版会 旧事務所

(松原実験研究棟?/1950年代?)


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旧応用物質化学分子教室・旧工学部2号館などの戦後建築





大きな地図で見る

【関連ページ】
九州大学病院地区の近代建築 …病院地区(福岡市東区馬出)にある建築物を紹介
九州大学 近代建築物撮影ツアー …2015年10月に行われた見学撮影ツアーの模様
箱崎キャンパス雪景色 …雪に包まれた日の風景(2016年1月)

【参考文献】
『福岡の近代化遺産』 2008年/九州産業考古学会/弦書房

【参考サイト】

レトロな建物を訪ねて > タグ:九州大学

ほか、建物の保存・解体に関する予定(外部リンク4)やキャンパス跡地の更地化の予定案(外部リンク5)などの資料も、計画の推移を傍観するうえで参考になります。

(外部リンク4)…箱崎キャンパス跡地利用上の課題への対応状況について(PDF)
(外部リンク5)…箱崎キャンパス跡地更地化スケジュール(案)(PDF)


(最終更新・2016年1月)

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コメント

非公開コメント

九大の象徴が保存されるそうです。

もう知っているかも知れませんが、箱崎キャンパスの再開発で九大の象徴的で歴史のある建物群の一部を保存するそうです。
入札の際に有効活用や保存を前提とするようですので、歴史ある建物の一部は残りそうです。
私は余り古い建物に興味は無いものも、九大のシンボル的な建物などは活用もしくは、保存してほしいと思っていたので良かったです。
私も記事にする予定なんですが、ちょっとすぐにはできそうにありません…

もし知らなかったらという感じでコメントをさせてもらいました。歴史ある建物を活用した町作りが楽しみです!

Re: 九大の象徴が保存されるそうです。

コメントありがとうございます。

一昨日から家を空けていたので(放浪の旅ではありません・笑)このニュースは知りませんでした。旧工学部本館と現本部第一庁舎、それに門衛所が保存されるそうですね!歴史的な建造物を何一つ残さず更地にしてしまうという(個人的に)最悪な事態も想定していたので、とりあえず数件だけでも保存が確実になり本当に嬉しいです。

九州大学が開学以来拠点を置いていたという歴史を活かした箱崎の新しい街づくりに期待ですね。そちらでもいずれ記事にされるということで、楽しみに待っています。

興味深く拝見しました。

初めまして、ブログ記事を興味深く拝見いたしました。
今をさかのぼること十数年前、私が大学学部生の時にウェブサイトを始めた際は、建築に関する情報もまばらで、さぐりさぐりやりながら九大の建築について調べ、また実際の建物に触れていきました。この手の分野で長くやっていると、ブログ交流の仲間意識も広がっていき、ここ数年はこれ以上の発見はないものと思い込んでいた自分が情けなくなるくらい調べ込まれた内容に、ただ感服いたしました。
現在ちょっとしたきっかけで他の方々よりも建築関係の情報を多く持つ立ち位置にあります。もし九州各地の建築でご興味をお持ちであれば、一度ご連絡いただければと思っています。当方連絡先は、下記ウェブサイト内の連絡先に記載しております。
改めまして、素晴らしいブログがあることに感謝申し上げます。

Re: 興味深く拝見しました。

コメントありがとうございます。メールをお送りしました。