博多古門戸アパートメント

博多古門戸アパートメント(旧 福岡ワカ末ビル)
福岡市博多区古門戸町/1965年6月竣工/鉄筋コンクリート造地上7階地下1階建
敷地面積246.46㎡/延床面積1170.77㎡/設計 増田友也/2006年11月改装
古門戸町交差点の角に立つ、直線的なデザインが特徴のビル。きれいな外観からは想像しにくいですが、竣工はなんと昭和40年。もともとオフィスビルとして建てられたものをコンバージョンしたアパートです。
かつてのビルの所有者である中滝製薬工業は、現在のクラシエ薬品(旧カネボウ)のルーツとなった企業のひとつ。大衆薬「ワカ末」が有名であり、当ビルの名称にも使用されていました。
また設計者の増田友也(故人)は京都大学で教鞭をふるわれた著名な建築家・建築学者さんとのことで、代表作に鳴門市役所、京都大学総合体育館など。自分は建築学生ではないので知識に乏しいべたな表現しかできませんが、コンクリートという素材の特性を活かした設計を得意とされていた(?)ようです。
天井照明。
階段。1階エントランスはモノトーンで纏められています。
エレベーターのパネルを照らす照明。丸いボタンがレトロです。
各階とも照明は必要最小限に抑えられ、落ち着いた雰囲気。こういうギザギザの薄い階段、大好きです。
裏側に浮かび上がる影もシャープですね。
この時代のビルって手摺の笠木は木製であることが多い気がするんですが、このビルは支柱から笠木までオール鉄製でした。しかも薄く平たい感じの。これまたシャープですね。
再び外観。白い壁に豆タイルでカラーを付ける手法はコンバージョンの際に新たに用いられたため、パッと見の外観は最近のマンションとも似通っています。
しかし、水平と垂直のラインを強調したグリッド(格子状)構造が、外観から発せられる雰囲気をそこらの建築とは明らかに違うものに変えています。綺麗に化粧直しされたこともあってか、他の同年代のビルが発するレトロさは微塵もなく、ひたすらに美しくカッコいい外観だと感じました。
とはいえ私もネットでこのビルの存在を知ってから実際に見に行ったので、初見でもそう思えたかは微妙なところですけどね。あまり幅の広くない道路に面しているので、徒歩でもなければ全く気付けずに通り過ぎてしまうかもしれません。仮に目に留まったならば、「アパートなのにバルコニーがない」ことに気付き、色々と調べた末にこのビルが秘めた歴史に辿り着けていたとは思います…たぶん。
コメント
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2016-01-06 17:40 編集
Re: タイトルなし
確かに印象深いデザインだと感じていましたが、意匠としての効果よりも前に、そのような構造的な役割があったのですね。当ブログで取り上げている「ふくぎん博多ビル」(2008年竣工)と似た構造のように思えますが、同じような技術が半世紀も昔からあったとは驚きです。
恥ずかしながら建築については全くの素人ですので、こうして専門的なお話を頂けるのはとても有難いです。重ねてお礼申し上げます。
2016-01-07 16:36 博多人(本町3丁目) URL 編集