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九州大学 本部第一庁舎  

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九州大学 本部第一庁舎
(旧 工学部第一新館 仮実験室研究室)

福岡市東区箱崎6丁目/1925年3月/煉瓦造2階建
設計:倉田謙 施工:佐伯工務所

箱崎キャンパスに残る近代建築の中でも特に人目を引く、赤煉瓦が美しい大きな建物。昨年度まで九州大学の本部が入居していた本部第一庁舎です。県登録だか市指定だかで有形文化財になっているそうですが、言及している公的機関のウェブページが見当たらないので詳しくは分かりませんでした。

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竣工は1925(大正14)年。既に耐震性の高い鉄筋コンクリート造が一般的となっていた時代であり、この規模の煉瓦建築としては晩年の作品に当たります。とはいっても敢えて煉瓦造を採用した訳ではなく、初代工学部本館が1923年に火災で焼失したことを受け、その仮住まいを確保する必要があったというやむを得ない事情によるものです。この建物は焼け残った部材を再利用し、初代本館があった場所の向かいに建てられました。

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ちなみに初代本館は1914(大正3)年に九州帝国大学工科大学の本館として竣工。床面積は本部第一庁舎の倍以上で内部には中庭を備え、また中央部の屋根上に時計塔を載せるなど、規模と外観デザインの両面で本部第一庁舎を大きく上回るスケールだったようです。こちらのブログに掲載されている当時の絵葉書(彩色)を拝見すると、その壮麗な雰囲気が伝わってきます。

武紗ぶるい > 歴史的建造物いろいろ

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それでは建物外観を正面から見ていきましょう。初代本館には及ばないものの、両翼を大きく広げた左右対称の威厳ある造り。両翼の張り出し部とその側面を除き、窓の配列は2連+3連+2連が基本。2階は普通の縦長窓、1階窓は欠円アーチで統一し、塔屋の半円アーチ窓がアクセントとなっています。

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翼部の窓は1+2+1の配列で、2階は中央2つが合わさり正方形の大きな窓を形成しています。煉瓦造という構造を踏まえると初見では少々違和感を覚えますが、屋上はコンクリートスラブによる陸屋根となっており、この窓の幅の広さにも納得できます。

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外観上の基本的な要素は小口積みの煉瓦壁面と石材の対比で、正面中央、特に2階の窓回りにはやや古典的な装飾が見られます。前掲リンク先の写真と見比べてみると、これらの部材が初代本館のどの辺りで使われていたか大体見当が付けられますね。

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玄関前から中央部を見上げる。簡素なポーチは後年の改装によるもので、もともとは上吊り式の庇が付いていたそうです。塔屋両脇を固めるようにして張り出した部分は、旧工学部本館に比べるとインパクトに欠けるものの、2階にのみコーナーを若干絞ったような処理が施されるなど細かな工夫が見られます。

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玄関付近を見ていきます。正面の石段、左右の車寄せスロープを見ると地表との高低差が妙に小さいですが、これは当初からの仕様でしょうか。

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玄関足回りに配されたブロック、スロープとポーチ内の床面、建物基壇部。石材の質感はそれぞれ異なります。

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入口両脇にはエンタシスを施した角柱が2対。

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玄関扉の手前のスペース。右手に目をやると、古そうなサッシが残る窓口。

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腰回りとカウンターは滑らかな質感の大理石仕上げ。

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左手にも同様に窓口が設けられています。

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なお大学本部は今年度から伊都キャンパスへ移転したとのことですが、入口右脇には表札が今なお掲げられていました(2014年11月時点)。

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※グーグルマップより

側面・背面に移る前に、旧工学部本館から見た正面外観も取り上げておきます。旧工学部本館は円形のロータリーを挟んで向かい側、初代本館の跡地に建っています。

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旧工学部本館の玄関ポーチ内からロータリー越しに。ちなみにこのロータリー、九州の南国イメージと合致したフェニックスが印象的ですが、これらは戦後になって植えられたもので、もともとは旧法文学部本館の前にある「昭和天皇お手植えの銀杏」(写真)がここに植えられていたのだとか。

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玄関からだとフェニックスに遮られるので、展望塔屋まで上って俯瞰。まずは建物全景。

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中央部をズーム。地上からは余程距離をとらない限り覗えませんが、中央の塔屋と玄関ポーチには排水のためか緩やかな勾配の屋根が設けられています。やはり煉瓦建築にはこうした屋根の方が似合いますね。

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さらにズーム。建物を上から見ているため屋上の寂しさが目に付くのは仕方ないとして、赤煉瓦の壁面とは対照的に素っ気ないパラペットが改めて気になります。建築当初の姿はどのような感じだったのでしょうね。

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翼部のズーム。中央の塔屋は外装が煉瓦壁なので微妙ですが、両翼の塔屋はコンクリート造のように思えます。旧工学部本館からは以上です。

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地上に戻り、右側面から背面・左側面と進みます。先程見下ろしていたものと同じ塔屋を見上げる。

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その塔屋の真下、右側面の出入口。正面玄関の開口部は1階窓と同様に欠円アーチでしたが、側面出入口は半円アーチ窓を備えており、ガラス越しに階段室の様子が少しだけ覗えます。

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床下換気口。正面・背面も基本的にはコレと同仕様です。

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唯一異なるのが正面両翼部。換気口が2個1組となっており、上部の模様もやや凝ったものが刻まれています。ちなみに鉄筋コンクリート造の近代建築では多彩なデザインのグリルが見られますが、この建物の場合は単なる木製の格子のようです。

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旧法文図書館の裏から、木々に遮られますが遠景。一旦キャンパスの敷地から出ます。

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敷地外の道路から背面翼部。

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当然ながら壁面の張り出しなどは抑えられるものの、窓の配列や形、そして窓回りの意匠は共通に仕上げられています。

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そんな中で建物背面だけ、それも両翼部を除く背面だけに見られる特徴があるのですが…

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以降は木々が生い茂っているので、再びキャンパス敷地内へ。建物のすぐ裏手から見ていきます。

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こちらが背面の様子。建物正面・側面や、背面両翼部との違いがお分かり頂けますでしょうか?

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とはいえ「写真が悪いから分からない」と言われれば全くもってその通りだと思うので、背面翼部との比較画像で早々に解答に移ります。

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※画像クリックで拡大

写真右手が建物背面、左手が背面翼部です。煉瓦の壁面に注目して頂ければ恐らく一目瞭然でしょう。建物の大部分が小口積みであるのに対し、何故か両翼部を除く背面だけは違う積み方(オランダ積み)となっているのです。

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前回紹介した正門門衛所(1914年竣工=初代本館と同じ)には小口積み、後日紹介する旧造船学実験室(1921年)や本部第三庁舎(1925年=本部第一庁舎と同じ)などではオランダ積みが採用されていますが、ここ本部第一庁舎ではその両方が外から見える形で併用されていることになります。それぞれの使いどころから考えると「わざわざ背面だけオランダ積みを選んだ」とするよりは、「人目に付く部分だけ小口積みで仕上げた」という表現の方が適切なんでしょうかね。

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背面を抜けて左側面へ。

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側面出入口。本部第二庁舎(普通のビル)との渡り廊下になっています。

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側面階段室の窓。

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最後に、再び正面。今回紹介した本部第一庁舎は保存活用を前提として運営主体が探られることになっており、キャンパス移転後も残る可能性が高い建物のひとつです。仮に保存されるならば、建物のもつ本来の価値を引き出すためにも、玄関庇の復元やパラペットの改修などの処置を望みたいですね。

もうひとつ、単なる個人的な好みによる妄想として。たった今述べたことと矛盾する内容かもしれませんが、初代工学部本館をイメージして寄棟屋根を新たに設けるというのはどうでしょうか…やっぱりダメですかね、こういう考えは。でも横に長い立派な赤煉瓦造の建物なので、そのぶん地上から眺めた際に屋根が見えないことに、どこか物足りなさを感じるんです。

何はともあれ以上、本部第一庁舎でした。


(撮影年月)

・2012年
 3月)001
 7月)002
 11月)003、004
・2014年
 9月)005~008
 11月)009~036

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