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九州大学 農学部6号館  


九州大学 農学部6号館
(旧 農芸化学本館)

福岡市東区箱崎6丁目/1938年/鉄筋コンクリート造地上3階地下1階建
設計:國武周蔵 施工:清水組

今回ご紹介するのは農学部6号館。竣工は昭和戦前と中々に古いものの、研究施設に加えて食堂や売店が入居しており、現在も学生の出入りが多い現役バリバリの施設です。火災で焼失した先代の建物に代わり、農芸化学教室の本館として1938(昭和13)年9月に建てられました。

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農学部正門から一直線に続く道を進むと、このような形で正面突き当たりに現れます。

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設計者は病院キャンパスの歯学臨床研究棟(1934年竣工)と同じく國武周蔵。竣工年は4年下っただけですが、こちらの方がより水平線を強調したモダンな外観になっています。

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戦時中はコールタールによる迷彩塗装が施されていたようですが、戦後にちゃんと落とされたようで築年数以上の薄汚さは感じません。恐らく建物に興味のない方にとっては、最近の建物には見えずとも、まさか築後76年が経過しているとも思えないのではないでしょうか。

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とはいえ近代建築好きにとって見所がない訳ではありません。まずは定石どおり中央に配置された玄関から見ていきましょう。

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左右には車寄せのスロープが配されていますが、正面に階段はなく植込みが設けられています。竣工当時の写真を見ると、これは後年の改造ではなく当初からの仕様のようです。

※後日、別の角度から撮影された写真を確認したところ、当初は正面に階段を設けた一般的な仕様でした。後に玄関前の丁字路に存在したロータリーを撤去した際、その植え込みを階段部分に移設し、現在の形になったようです

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玄関ポーチ。支柱を設けず、緩やかな曲線を描く片持ち梁に支えられています。同タイプのポーチは市内だと中央区大濠公園の旧福岡地方簡易保険局(1934年竣工・写真)などでも見られますが、当時としては先進的なスタイルだったのでしょうね。

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両脇には幾何学的なデザインの鉄格子を備えた丸窓。このように玄関は従来の様式を踏襲しつつ、随所に新たな要素が取り入れられています。

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続いて正面外観。窓は柱と接しないように外側へ若干張り出し、開放的な印象を与える水平連続窓となっています。

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ただし全面に採用している訳ではなく、このように中央部のみ仕様を変えています。これによって塔屋の突出や前面への張り出しがないシンプルな構成にも関わらず、中央を軸とした左右の対称性が感じられるファザードに仕上がっています。

ちなみに壁面に痕跡が見て取れるとおり、九大の建物としては珍しく(?)以前は中央頂部に時計が付いていたようです。

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続いて側面を見ていきます。

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各階から飛び出した薄い窓庇も中々ですが、中央に突出した塔屋の丸窓が一際目を引きます。

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またファザードの水平連続窓と関連付けてか、側面では階段室がガラス張りとなり、垂直連続窓を形成しています。

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背面へ移動。正面からは単なる横長のビルに見えましたが、こちらは少々様子が異なりますね。

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背面の両側には張り出しが見られ、端部は本体より1段低い2階建て。

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そして中央は本体より1段高い、4階建てとなっています。

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他と同じく目立った装飾のないシンプルな外観ながら、よく見ると基本的な構成は本部第一庁舎(1925年竣工・写真)や旧工学部本館(1930年竣工・写真)などと似ていますね。正面・側面の外観が戦後の建築にも通じるモダンな雰囲気となっている一方で、背面に近代~現代の過渡期の作品であることが表れる恰好となっています。

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最後に再び正面。当建物も「比較的評価の高い近代建築物」であるグループBに分類され、保存に向けては安全性の調査と再開発事業者との協議のクリアが必要となります。ただ一昨年に行われた調査の評価報告(※)では “耐震性能はほぼ満足の値であり、コンクリート劣化も少ない” とされており、安全性の面で特に問題は見られないようです。農学部は完全移転直前の2018(平成30)年まで残るようなので、長期間にわたり放置される心配も少ないでしょう。

※…九州大学箱崎キャンパスにおける近代建築物の調査ワーキンググループの評価報告(PDF)

玄関周辺や建物背面に近代の名残をとどめつつ、適度にインターナショナルスタイルを取り入れた魅力ある建物だと思います。いつまでも「え、この建物って築○○年も経ってるの?全然見えな~い」と人々を驚かせる存在であってほしいですね。以上、農学部6号館(旧称・農芸化学本館)でした。

(撮影年月:2014年9月)



おまけ。記事冒頭で述べた通り、現在見られる建物は農芸化学教室の本館としては2代目に当たります。初代本館は木造2階建ての洋風建築で、農学部の開設から3年後の1923(大正12)年2月に竣工し、1931(昭和6)年2月10日に火災によって全焼したとのこと。

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その建物の外観ですが、概ねこのような姿であったようです。建物中央は二段勾配の寄棟屋根(マンサード屋根)で、半円ドーマーを備えた翼部をもち、正面の丁字路にはロータリーが存在していました。なお九大文書館のサイトを漁っても正面中央付近を写した写真しか見当たらなかったため、それらをもとに窓は確認できる部分のみ、また背面の構成は想像で補完しています。

参考…写真目録九州帝国大学時代(検索結果:農芸化学)

一度はこの目で見てみたかった大規模な木造洋館ですが、同じく農学部の開設初期に建てられた同様の建物も現存していないことを考えると、火災に遭わずとも結局は建て替えられる運命にあったのでしょうね。

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