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九州大学 グラミン・クリエイティブ・ハウス  


九州大学 グラミン・クリエイティブ・ハウス
(旧 工学部高周波電気及電子工学実験室)

福岡市東区箱崎6丁目/1931年3月/鉄筋コンクリート造2階建
設計:渡部善一 施工:大林組

九大箱崎キャンパス旧工学系エリアの西側に位置し、小松門から入っていくと右手に側背面が見えてくる小さな建物。工学部の高周波電気及電子工学実験室として1931(昭和6)年に竣工したグラミン・クリエイティブ・ハウスです。

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超伝導システム科学研究センターなどを経て、工学部が伊都へ移転してからは空き家となっていましたが、2011年に「アジアにおけるソーシャル・ビジネスの拠点施設」とすべく改修され現在に至っています。ただ周辺一帯は来年度(2015・平成27年度)の更地化完了が予定されており、その影響からか建物に入居する「ユヌス&椎木ソーシャルビジネス研究センター」(SBRC)は昨年末に旧工学部本館へ移転したとのこと。

ソーシャル・ビジネス研究センター(SBRC)移転のお知らせ (SBRCホームページ)

当記事の写真はすべてSBRC移転前の撮影であり、また移転後は現地を訪れていないため、現時点で建物がどういう状況にあるのかは分かりません。近年になって改修されたばかりなので、まだ何らかの形で使用されているとは思いますが…。

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(2012年秋撮影)

ちなみにここ2年ほどの間で正面に生えていた松の木のうち1本が伐採され、小松門側の隣接建物も解体されるなど、以前に比べて建物の外観が見やすくなっています。見納めにはちょうど良い状態かもしれません。

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それでは現況とはいきませんが、建物の様子を見ていきましょう。

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玄関・階段室・塔屋を正面中央に集約した左右対称のスタイル。

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規模・構造ともに近くにある旧河海工学実験室(写真、1925年竣工)や旧法文学部心理学教室(写真、1927年竣工)と似通っていますが、外装材に黄土色のスクラッチタイルが採用されていることもあり、パッと見だとモルタル外装の前出2件とは大分違った雰囲気になっていますね。

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また外壁よりも引っ込んでいる階段室の窓や、各階の窓の上下と軒に張り巡らされた水平方向の帯、そしてスクラッチタイルの溝が生み出す陰影によって、全体像がシンプルな割に彫りの深い外観を形成しています。

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正面中央部。2階~屋上の踊り場に設けられた窓は他の半分程度のサイズしかなく、また途切れることなく続くはずのタイル帯がここでは窓台にのみ用いられているなど、他の部分と異なる特徴がいくつか見て取れます。

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上下の窓間には壁面を僅かに窪ませた円形の意匠。こうしたさりげない工夫の数々によって、一見単調にも思える建物の外観が実に印象深いものとなっています。

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玄関。特に装飾のない薄い庇が短く突き出る程度で、いたってシンプルな造りです。

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それでも開口部周囲にはアールが付けられており、手抜き感は全くありません。ちなみに番号プレートの数字は「一〇一」。

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内部の様子が気になったので、ちょっとだけ覗いてみます。

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が、少なくとも玄関付近や階段には時代を感じる造りは見られませんでした。近年の改修で失われたのかといえば、そういう訳でもなさそうで、もともと装飾性の高い内装ではなかったように思えます。

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外観に戻ります。玄関前から中央部を見上げる。

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窓回りの引っ込んだ部分にもタイルが張られています。

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外装タイルの詳細。最も多く使用されているのが写真下の一般的なスクラッチタイル。各階の窓と同じ高さの壁面に使用されているのが、写真上の縦横両方向に溝が刻まれた正方形のスクラッチタイル。それらを区切る形で帯状に巡らされているのが中央のタイルです。

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このように剥離した箇所も一部見受けられるものの、全体の状態としては概ね良好。やや黒ずんで見えるのは戦時中のコールタール迷彩の名残と思われます。

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粗方の特徴は押さえたので、反時計回りに外観をざっと見ていきましょう。

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正面右側。

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窓が少ない右側面。

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裏手に別の建物が接しているため、背面の写真は無しです。

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左側面へ。

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柔らかな曲面が素敵なコーナー。

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最後に、再び正面へ。

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塔屋付近。

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当建物は「安全性に問題有りと認められる近代建築物」であるグループCに属しており、完全保存による利活用は困難とされています。今後の取扱いは外観や部材の一部、または記録での保存も含めて検討されるそうですが、最悪の場合跡形もなく撤去されてしまうかもしれません。

小規模ながら例に漏れず丁寧にデザインされた作品であり、特に外装の仕上げ方においては九大の建物の中でもかなり個性的だと思います。異なる種類のタイルが巧みに使用されたこの外壁だけでも、できることなら残してほしいものです。

以上、グラミン・クリエイティブ・ハウス(旧称・工学部高周波電気及電子工学実験室)でした。


(撮影年月)

2012年11月)001~010
2014年9月)011~026
2014年11月)027~034

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category: 明治~昭和戦前

thread: 建物探訪

janre: 学問・文化・芸術

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コメント

博多人様

いつも楽しく拝見しております。
先日西日本新聞に、グラミン・クリエイティブ・ハウスの
お別れイベントが記事になっていましたね。
記事では20日から取り壊しに入るとのことで、貴ブログで知って以来
実物を見ようと思っていたのですが間に合いませんでした。
箱崎キャンパスに残った建物を一つでも多く見ておきたいと思いながら
果たせないままに終わりそうです。

建築ファン #- | URL
2015/04/21 23:21 | edit

Re: 建築ファン様


コメントありがとうございます。
私もニュース記事を見ましたが、いよいよ歴史的建造物も取り壊しの時期が来たのか、と少々驚いています。
どうやら旧道路工学実験室と第三学生集会所(三畏閣)の2つも、同様に近く解体されてしまうようです。

博多人(本町3丁目) #- | URL
2015/04/22 19:08 | edit

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