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九州大学 旧応用物質化学機能教室  

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九州大学 旧応用物質化学機能教室
(旧 工学部応用化学教室)

福岡市東区箱崎6丁目/1927年10月/鉄筋コンクリート造地上3階(一部4階)地下1階建+塔屋
設計:倉田謙、小野(小原?)節三 施工:佐伯組

旧工学系エリアの中央付近、キャンパスを南北に貫く大通り沿いに位置する大きな建物。1927(昭和2)年に2代目の応用化学教室として建てられた、旧応用物質化学機能教室です。残念ながら工学部の移転後は閉鎖されており、現在は使用されていません。

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全景。例に漏れず中央に玄関を配した左右対称のスタイルですが、縦方向の突出や横方向への広がり、前方への張り出し等は控えめとなっており、平面・立面とも比較的シンプルにまとまっています。

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特筆すべきはファザード中央部で、両翼部より奥まっているうえプロポーションも然程変わらず、また高い塔屋や大規模な玄関ポーチといった威厳ある造りも見られません。同時期のRC建築である旧法文学部本館(写真)や旧工学部本館(写真)とは対照的ですが、かといって農学部6号館(写真)ほどインターナショナルスタイルに傾いている訳でもなく…そういう意味では個性派揃いの九大の建築群においても、際立って特異な存在だといえます。

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ただ、不幸なことに戦時中のコールタール迷彩の名残で外壁がやたらと黒ずんでおり、そのために建物の異質さが悪い方向へと作用している感も否めません。中央4階に見られるようなベージュが本来の色だったそうですが、仮に全体がこの色だったならば、パッと見での印象も大きく違ってくるのではないでしょうか。少なくとも「暗い」「薄汚い」「地味」といったイメージを持たれることはないはずです。

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何はともあれ、外観の詳細を見ていきましょう。まずは正面玄関から。先ほど少し触れたように割とあっさりした造りで、車寄せスロープは備えておらず、ポーチも僅かに張り出す程度です。

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その反面、支柱ではなく両翼から横に突き出す梁で支えられた(ように見える)玄関庇の構造や、入口周辺に用いられた凝灰岩とその意匠など、他の建物に見られない特徴も目立ちます。

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扉頭上にはグリルを備えた換気口と「応用化学教室」の表記。「学」「教」などは何やら見慣れない形をしていますが、調べてみるとこれらは古代に使用されていた字体のようです。

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足回り。低い石段は建物外壁と同じくアールを描いています。

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またスロープや石段の脇を固める形ではありませんが、足元を区画するため要所に石材が用いられています。

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ファザードの窓は中央部のみ2+3+2列、両翼では2+2+2の配置。

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基本的には縦長窓が用いられ、当初のものと思われるスチールサッシが比較的よく残ります。

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窓の詳細。上下のタイルが斜めに迫り出して程よいアクセントになっており、特にデンティル(歯飾り)を意識したような形状のまぐさ部分が目を引きます。

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また各窓の下には換気口が一つずつ付き、その全てに華やかなデザインのグリルが嵌め込まれています。

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中央4階と塔屋の窓は尖頭アーチの上部を埋めたような独特の形状。この形は他の建物では旧工学部本館(写真)でしか見られないので、妙に印象に残ります。

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さらに異彩を放っているのが、頂部に張り巡らされたタイル装飾。

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大部分の外壁は平坦なタイルを芋目地(通し目地)に張ってシンプルに仕上げているのに対し、頂部のみ馬目地(破れ目地)で、タイルも菱餅を半分に切ったような変わった形です。このユニークな仕様によって生じた陰影は時間帯によって表情を変え、何ともいえない美しさを見せています。

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主な外観の要素を見終えたところで、側背面に移りましょう。

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正面に見られない特徴の一つが、柱型のようにぴったりと外壁に張り付いた煙突の数々。後年に増設されたであろう幾本かのダクトとともに、建物が実験施設として使用されていたことをうかがわせます。

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煙突の根元。一部でタイルが張り替えられていました。

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両側面には出入口が一つずつ設けられています。窓割りを見た感じでは、階段室の部分に位置しているようです。

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出入口の庇。丸い照明が一つ下がります。

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滑らかな曲面を眺めつつ。

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背面へとやって来ました。

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ファザードのややずんぐりとしたシルエットとは裏腹に、中央4階から突き出した塔屋が雰囲気を威厳あるものにしています。窓の形や頂部の装飾がもつ独特な魅力も相まって、さながら西洋の城郭や要塞のよう。

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斜めに配された3列の窓は恐らく階段室のものでしょう。ここにも出入口が設けられています。

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堅く閉ざされた扉。開口部は煉瓦色のタイルで縁取られています。

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大通りに面した表側はある程度管理されているのに対し、こちらではツタも伸び放題。

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地階への出入口には雨水が溜まっていたり、窓があったと思しき部分が埋められていたりと、半ば廃墟のような状態です。

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地階入口の向こうには、ゾウの鼻のように壁から伸びた渡り廊下。

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その付け根にも扉が1つ。背面には計3つの出入口があることになります。

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見上げる。煙突や配管が忙しく這っています。

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さらに一歩下がると電線やら何やらで一層ゴチャゴチャ感が増しますが、これはこれで街中に佇んでいるようでアリだと思います。

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最後に、屋上や塔屋の様子を遠巻きに。

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4階屋上から塔屋の上にも階段が続いていますが、展望スペースでもあったんでしょうかね。

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所変わって、旧工学部本館より望む。

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塔屋の一部アーチ窓には繊細なデザインのグリルも見て取れます。建物内部は当然として、一度はこの屋上に上ってみたいものです。

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当建物は「安全性に問題有りと認められる近代建築物」であるグループCに属しており、完全保存による利活用は困難とされています。今後の取扱いは外観や部材の一部、または記録での保存も含めて検討されるそうですが、最悪の場合跡形もなく撤去されてしまうかもしれません。

個人的には旧工学部本館・旧法文学部本館と並び、九大で最も好きな建物のひとつです。さらに言えば旧工学部本館は門司市役所庁舎(現・北九州市門司区役所)、旧法文学部本館は西日本新聞旧本社屋(現存せず)という類似した作品が存在するだけに「希少価値はこの建物が頭一つ抜けているのでは」とすら考えています。

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また「もしも迷彩塗装が施されずに(もしくは戦後に落とされて)いたとしたら、大学関係者の建物に対する見方・感じ方・使い方は違ったものになったのではないか?」とも思ってしまいます。まあ現に老朽化が進んだ今となっては仕方のないことですが、壊してしまうにはあまりにも惜しい、特別な存在だという訳です。

以上、旧応用物質化学機能教室 (旧称・応用化学教室)でした。


(撮影年月)

2012年3月)001
    11月)002、003
2014年9月)007~050
    11月)051~060

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