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2015/03/16 (Mon) 10:00

呉服町ビジネスセンタービル

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呉服町ビジネスセンタービル
福岡市博多区上呉服町10-10/2003年10月/鉄骨造(一部SRC造)地上10階地下2階建
設計:マイケル・グレイヴス・アンド・アソシエーツ(Michael Graves & Associates)、INA新建築研究所
施工:竹中工務店

明治通りと大博通りが交わる呉服町交差点の一角。オフィスビルが林立する街並みの中で、一際目立つ個性的な外観の建物が存在します。地元ディベロッパーの福岡地所が事業主体となり、世界的な建築家のマイケル・グレイヴス氏がデザインを手掛けられたオフィス中心の複合ビル、呉服町ビジネスセンターです。

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かつてこの地には博多大丸や博多帝国ホテルなどが入る東邦生命福岡ビル(1956年11月全館竣工)があり、周辺は福岡市を代表する繁華街のひとつとして賑わいを見せていました。しかし博多駅の移転や天神への商業集積によって次第に地位が低下し、帝国ホテルは69年に撤退、大丸は75年に天神へ移転。その後は地場大手スーパーの寿屋が入居したものの、老朽化による建て替えに伴い99年に閉店します。そのころ既に周辺はオフィス街へと変貌しており、以前の面影はほとんど残っていませんでした。

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そして2003年、東邦生命福岡ビルの跡地に完成したのが、この呉服町ビジネスセンタービルです。大型商業施設であった先代のビルとは性格が異なりますが、高いデザイン性によって地域の新たなランドマークとなっています。実際、低層階にはクリニックや店舗も複数入居しており、また地下鉄駅にも直結しているため、より幅広い層に利用される施設になっていると思います。


【外観】

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それでは建物を外観から見ていきましょう。ベースとなっているのは立方体に近い単純な形状のビルで、石材などによる意匠はその本体を覆う形で施されているようです。立面は四方とも左右対称、基壇・胴・頂部の三層構成で統一されており、シンプルな形状と相まって妙な安定感があります。

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デザイン面では壁面や窓に見られるようなグリッドが多くを占めていますが、色の使い分けや要所に用いられた円形が良いアクセントになっており単調さは感じません。

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石材や円柱を組み合わせた飾り付けも見事です。鈍い光沢を放つダークグリーンの窓に、鮮やかなイエローやオレンジが映えます。

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全体的なデザイン手法としては、事業主体・設計者とも同一の博多駅前ビジネスセンタービル(写真、1999年竣工)と似ていますね。

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交差点側に設置された時計付きのテナントサインや、大きく"SUBWAY"と表示された地下鉄出入口(福岡市営地下鉄箱崎線・呉服町駅5番出入口)もイカしています。

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オープントップバスと。

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アクロス福岡屋上からの遠景。ビル群の向こうに少し顔を出している程度にも関わらず、この存在感です。

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大博通り側1階付近。中央の円柱に支えられた開口部はクリニックや店舗、地下鉄の利用者向けの出入口。

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その右手にあるこちらの出入口が、ビルとしての正面玄関になるようです。


【内装】

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ここから内装を見ていきましょう。なお、内装の写真は夜間に撮影したものもかなり交じっています。

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正面玄関通路の冬バージョン。

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同じく夏ver。

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扉を抜けて内部に入ると、1~2階の吹き抜けホールが現れます。

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見上げれば四角い水色。円柱が並んでいます。

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お次は円形の吹き抜け。エントランスには吹き抜け空間が縦に3つ並んでおり、真ん中のみ円形となっています。

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※画像クリックで拡大

入居テナントの案内(2015年1月撮影)。地下1階にスーパーマーケットとドラッグストア、1階にカフェと焼肉屋・居酒屋といった店舗が入り、また2階はクリニックゾーンとなっています。

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入って来て左手にエレベーターホール。

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片側に3基ずつ、計6基のエレベーターが存在します。

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見上げるとここにも円柱が。

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地下1階EVホール。天井がやや低くなるぶん、石材をふんだんに使用した内装の重厚さが際立ちます。

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2階EVホール。地下1階と1階とは異なり、床はカーペット敷きになります。

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穴のほげた怪しげな円筒形の物体。

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覗き込む。先ほど下から見上げたばかりの吹き抜けホールです。

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レンズが汚れていたみたいです。
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裏手にある丸窓。外に見えるのはお隣に建つ博多三井ビル(写真、1963年竣工)。

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四角い吹き抜け部分。手摺は転落防止のために必要として、円柱は純粋な装飾のようです。

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EVホールの反対側へ。

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ここにもガラスで仕切られた怪しげな空間があります。

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1階とクリニックゾーンのある2階を結ぶエスカレーターでした。

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続いて、店舗が入居している辺りへ移ります。ここは1階通り側の2面に壁が設けられておらず、また地下1階と1階、1階と2階が吹き抜け構造になっているため、地下1階~2階にかけて半屋外的な空間が形成されています。

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大博通り側の出入口。

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内部。正面が2階へのエスカレーターに通じる玄関です。右手にはドトールコーヒー(博多呉服町店)が入居しており、吹き抜け内部にはテラス席も設置されています。

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左手には地階へと下るエスカレーター。

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角度を変えて。半屋外的な空間構造が分かりやすいかと思います。なお、エスカレーターを下った先に続く階段は地下鉄の出入口です。

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下って地下1階から。スーパーのサニーとドラッグセガミ(いずれも呉服町店)が入居。サニーの方は24時間営業です。

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エスカレーターとは別に明治通り側に階段があり、上るとここに出てきます。

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戻って来ました。

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最後に、外観夜景。

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ベースがシンプルな箱型なので、ハイアットリージェンシー福岡(写真、1993年竣工)などと比べてしまうとややインパクトに欠けるかもしれませんが、明るく大胆な色彩と端正なデザインが不思議な魅力を感じさせる素晴らしい建物だと思います。氏が残された数々の作品とともに、末長く福岡を代表する建築物のひとつで在り続けてほしいと願っています。


(おまけ)

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博多祇園山笠の期間中、当ビルの大博通り側に接する形で東流の飾り山が出現するのですが…

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ビルの側へ回ってみると、飾り山の山小屋を固定するための設備がこんな所に付いています。だからどうという訳ではありませんが、初めて見た時はえらく感心した記憶があります。

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ちなみに担いで回る「舁き山」の方も、期間中はビル1階に展示されています。

以上、呉服町ビジネスセンターでした。

≪撮影年月≫
2012年7月)001~003
    10月)004、005
2013年2月)006~010
    7月)011~021
    11月)022~024
    12月)025
2014年2月)026~037
    7月)038、039
2015年1月)043~067

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