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2015/04/21 (Tue) 10:00

九州大学 農学部庭園

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九州大学 農学部庭園
(旧 構成見本園)

福岡市東区箱崎6丁目/1932年

箱崎キャンパスの北側に広がる農学系エリアの通り沿い、農学部4号館(写真)の斜め向かいに存在する庭園。2012年の有識者調査では一連の近代建築群に加えて評価の対象となっており、その報告書によると1932(昭和7)年の竣工だそうです。

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庭園といっても敷地は猫の額ほどしかなく、人目を引くような派手な造りもありません。そのためうっかり見過ごしてしまいそうですが、よくよく見ると小規模ながら丁寧に作り込まれています。

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正面突き当りにある構造物。単なる一枚の壁のようで中々複雑な形をしており、表面を石、頂部を瓦で飾った姿は海外の城郭や宮殿のよう。敢えて言うなら、中国や東南アジアっぽい雰囲気でしょうか(行ったことないけど)。

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足元には水が張られ、その周囲はタイル貼りとなっています。さらに噴水だったと思われる人面があしらわれており、こちらはどことなく中近東っぽい雰囲気(これまた行ったことないけど)。

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成程これはアジア風の庭園なのか…と思いきや、手前左側の池には西洋出身の小便小僧もいます。寄せ集めといっては何ですが、特定の地域や様式にこだわった作品ではないようです。

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右側の池の隅には「構成 見本園 1935」と刻まれたプレート。ちなみに農学部の誕生は1919(大正8)年とのことなので、この庭園は学部設置10~20周年あたりの節目に造られたのかもしれません。

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続いて、噴水の左にある小さな東屋。柱はタイルに覆われた頑丈なコンクリート造ですが、屋根は藤棚のような簡素な仕様となっています。平面は正方形や菱形ではなく、いわゆる凧形といった感じ。

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出入口から内部を見る。奥には半円アーチの透かしを備えた壁があり、その手前には後年の設置と思われるテーブルと椅子が存在します。内部は正直言って狭く、もうちょっと開放感が欲しいところですが、古い建物のドアノブが低い位置にあるのと同じで、これも当時の日本人の体格に合わせた設計なのでしょう。

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両側面には木製の格子が嵌め込まれています。こちらは左側。

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右側はいささか凝った造形をしています。恐らく内部から噴水を眺めた際に、額縁のように機能することを想定しているのでは…との考えに至ったのは記事を書いている最中のことで、不覚にも現地では東屋内部に足を踏み入れてさえいませんでした。

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ただ少しだけ言い訳をさせて頂くと…本来の植生の生長に加えて雑草も生い茂った現状では、どうにも設計者の意図まで感じ取りにくい面がありますし、そもそも庭園自体やや近寄り難いような印象を受けてしまうのです。ちなみに竣工間もない頃の写真を見ると現在よりも明るい雰囲気であり、このような状態ならもっと注意深く観察できたと思います(言い訳ここまで)。

◎写真目録九州帝国大学時代(検索結果:構成見本園)

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先述のとおり有識者調査の評価対象に含まれているものの、今後の取扱いの方向性については示されませんでした。しかも評価報告書を見るとあまり高い評価は受けておらず、また一般的な知名度の面でも建築物に比べて地味なので、このまま跡形もなく撤去されてしまう可能性も否めません。

しかし性質上それほど広い敷地を要する訳ではなく、安全性の問題も少ないと思われるため、実際に保存活用するのはそう難しい話ではないでしょう。案外こうした小さな物件における判断の如何にこそ、キャンパス全体の遺産に対する意識、そして取扱いの方向性が表れるかもしれませんね。

以上、農学部庭園(旧・構成見本園)でした。

(撮影年月:2014年11月)

【関連ページ】
九州大学箱崎キャンパスの近代建築

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