九州大学 旧船舶海洋工学実験水槽上屋

九州大学 旧船舶海洋工学実験水槽上屋
(旧 工学部造船学実験水槽上屋)
福岡市東区箱崎6丁目/1924年?/木造平屋建
旧造船学実験室と渡り廊下で接続する大柄な木造建築。外部からは一見して用途が分かりづらいですが、造船学に用いられる実験水槽を覆う上屋として建てられたものです。
位置関係はこの通り。赤煉瓦の建物が旧造船学実験室(以下、実験室)で、写真左が今回取り上げる旧実験水槽上屋(以下、水槽上屋)。なお、中央手前の小さな建物も後程ご紹介します。
建物正面。やけに高い所に入口が設けられていますが、恐らく内部に水槽がある関係で床自体が高くなっているのでしょう。
玄関ポーチというか、渡り廊下とを繋ぐ大きな屋根。
隙間から見上げた正面外壁。全て無塗装の板張りで窓もなく、意匠や装飾の類も全く見られません。
側面に回ってみても、同じく特に見所のない外観が続きますが…
なかなか建物が途切れる様子がなく、延々と歩いていくうちに旧航空学教室の裏手までやって来てしまいました。
※グーグルマップより引用・加工
航空写真で確認するとこの通り(赤色の線で示した部分)。実験室もかなり細長い建物ですが、実にその倍近くもの長さを有していることが分かります。
そのため建物の反対側へ回るのも一苦労だったようで、中ほどには歩道橋や跨線橋のような設備も見られます。もっとも老朽化のためかロープで塞がれており、現在は通れない様子でしたが…。
この辺りでは等間隔に窓が配されており、当初からのものと思われる木枠や窓割りなどに僅かながら時代を感じます。とはいえ外から建物を見た際の最大の特徴は、建物そのものの形、すなわち一般的な施設では考えられないほどの細長さにあるといえるでしょう。
建物のデータは見つかりませんでしたが、西日本新聞のウェブサイトに実験水槽の写真が掲載されており、その説明によれば水槽の設置は1924(大正13)年とのこと。恐らく上屋の建築年も同時期であると思われます。
◎西日本新聞ニュースTOP > @九州大学 ~研究室から > お宝フォト
ちなみにこの水槽は国内で3番目に設置されたもので、現存するものでは最古なんだとか。上屋だけ見ると「とにかく細長い、木造の古い建物」という感想しか出てきませんが、意外と凄い施設のようですね。水槽上屋については以上です。

お約束通り、実験室と水槽上屋の傍らに建つ小さな建物。実験室または造船学教室(現存せず)に付随して、1921(大正10)年頃に建てられたと思われる便所です。

(2012年撮影)
以前はこんな感じで緑に包まれかけていましたが、実験室と同じくここ数年の間に草木が刈り取られています。


用途が同一であるという前提はあるものの、先日ご紹介した松浜厚生施設に付属する便所(写真)と非常に似た雰囲気。

ただし腰から上の外壁が漆喰で仕上げられているので、若干こちらの方が本来のハーフティンバー様式に近いようにも思えます。

実験室側から。これまた渡り廊下で接続されています。

最後に、実験室・水槽上屋・便所のスリーショット。今回取り上げた水槽上屋と便所は有識者調査における評価の対象となっておらず、また閉鎖されて久しいことから解体撤去は避けられないものと思われます。実験室は保存活用の可能性が一応残されているものの、このスリーショットが失われてしまうのはほぼ確定的といえるでしょう。
ちなみにこのアングルの反対側には旧応用化学教室を始めとする3棟(写真)が存在しており、2つの区画に跨る形で昭和戦前のキャンパス風景が残っていることになります。ただし周辺一帯は2016(平成28)年度の更地化を予定しているので、この風景もあと1年ほどで見納めとなるようです。
以上、旧船舶海洋工学実験水槽上屋(旧称・工学部造船学実験水槽上屋)と便所(旧称・工学部造船学科便所?)でした。
(撮影年月)
2012年11月)001、002
2014年9月)003~010
2014年11月)011~018
【関連ページ】
・九州大学箱崎キャンパスの近代建築
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