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旧 十七銀行福島支店  


八女市本町の商業建築(旧 十七銀行福島支店)
福岡県八女市本町/1933年/木造2階建

少し間が空きましたが…八女福島・後編の記事より、改めて紹介させて頂きます。八女福島の中心街に程近い場所、県道96号「土橋」交差点から南へ少し進んだ先にある建物。

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一見何の変哲もない商店の建物ですが、向かって右手(西側)の立面には洋風の意匠が施され、2階部分に見られる2連の丸窓も妙に目を引きます。実はこの建物、現在の福岡銀行(本店・福岡市)の前身にあたる十七銀行によって1933(昭和8)年に建てられ、55(同30)年まで銀行支店として使用されていた、昭和初期の銀行建築なのです。

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銀行として営業していた当時の写真がこちら。十字路に面した角を切り落として玄関を設け、双方の通り側に窓を3列ずつ並べた左右対称の構成。この時期の銀行建築の例に漏れず、古代ギリシャに由来する古典的な様式でまとめられていますが、敷地上の制約からかオーダーなどは用いられず、凹凸が少なくやや平坦な印象です。一方で個々のデザインに目をやると、玄関庇は浅い割に厚みがあり、また採光用の半円アーチ窓や丸窓を効果的に配するなど、様式に囚われない軽快な一面も見えてきますね。

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再び現状へ戻って先の古写真と比較すると、玄関部分と左手(北側)の立面が大幅に改造されているのが分かりますが、概ね原型を留めている西側立面についても、窓が3列から2列に減っていることが見て取れます。恐らく交差点の改良のために、建物角の部分が窓1列ぶん削られたのでしょう。

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それでは外観を見ていきます。まずは西側から。

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通りに面して出入口が設けられている点を除けば、先述のとおり比較的原型を留めています。縦長窓の両脇に小さな突起物が並んでいますが、これは当初取り付けられていた格子の名残のようです。

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頂部付近の詳細。歯飾り(ディンティル)は軒に巡らす形ではなく、窓の直上にあたる部分に断続的に用いられています。それと窓の間の少し張り出している部分は、一応オーダーを意識した付け柱(ピラスター)ということになるのでしょうか。

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こちらは交差点側の削られた部分。コーニスもここで途切れており、以降はパラペットと頂部の壁面とが一続きになっています。

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パラペットは四方に隈なく立ち上がっており、建物を陸屋根のように見せている…のかと思いきや、いざ距離を取ってみても屋根は窺えませんでした。航空写真で確認すると実際その通りか、または南方向へ緩やかに下る片流れ屋根のようです。

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そして西側全景。切妻造瓦葺きの建物が右手(本体の南側)に張り付いていますが、これは商店への転用の際に店主の住居として増築された部分と思われます。

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下半分には銀行脇によくある通用門らしき造りが残っているので、多分ここはバックヤードのようなスペースだったのでしょう。

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南隣の敷地より。通用門や塀は煉瓦造のようです。

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外壁の詳細。建物の構造は木造(恐らくは)ですが、銀行建築らしく重厚なモルタル外装となっており、足元はさらに一回り厚く仕上げて基壇としています。

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当初の基壇部は壁面よりも明るい色だったようですが、現在はベージュ一色に塗り込められています。ただし塗料の剥離した部分を見ると、定石どおり洗い出し仕上げだったのではと思います。

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壁面では窓の部分を除く大部分に目地が切られています。垂直方向には目地が見られませんが、当初の玄関庇のデザインを踏まえると、水平線を強調する意図があったのかもしれません。

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所変わって北側立面。西側とは異なりほぼ原型を留めていませんが…こちらで営業されている婦人服店の店主さんにお話を伺った際、建物の内部を見せて頂きました。その時の写真を一枚だけ。

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現在は使用されていない2階の天井。南北に2本の太い梁が走り、周囲は折り重なったモールディングで縁取られています。こうした装飾的な仕上げは人目に触れることを想定したものなので、当初は例に漏れず1~2階の吹き抜け空間だったと考えるのが妥当でしょう。

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また2階の外観をよく見ると、西側以外の大幅な改造を受けた部分では、もともと1階にあった縦長窓(上げ下げ式)が移されて使用されています。この縦長窓と当初存在した半円アーチ窓・丸窓との最大の違いは、嵌め殺しではなく開閉が可能な点。やはり銀行時代の内部は吹き抜けであり、転用にあたって2階床が新たに設けられた際、これらの窓配置の変更が行われたものと考えられます。先述の交差点拡幅に伴う改造を受けたのもこの時かと思われますが…改造の仕方・経緯ともに複雑で、何だか頭が痛くなりますね(自分の説明下手も影響してますが)。

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ちなみに店主さんのお話によると…2階には数十年前までビリヤード場があり、また1階の他の部分は自転車店と文具店、さらに昔は食堂が存在したとのこと。この食堂を経営されていた方が建物の所有者で、建物を区分して貸し出していたものの、現在は店主さんの婦人服店だけが営業を続けられているそうです。

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そうした状況を何となく察していた節があり、珍しく思い立ってすぐに足を運んだのですが、当の店主さんはこの建物に愛着を持たれているらしく、旅立つ前に自分の考えたことは幸いにも杞憂でした。ということで、形を変えつつひっそりと残っていた銀行建築は、今後もしばらくはこの地に在り続けることでしょう。

以上、八女市本町の商業建築(旧・十七銀行福島支店)でした。


(おまけ)

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最後に、銀行支店と建築用途の歴史について、それぞれざっとまとめておきます。

<銀行支店の沿革>
1912大正元年12月 三潴銀行福島支店として開設
1925大正14年2月 十七銀行が三潴銀行を合併。十七銀行福島支店となる
1933昭和8年8月  新築移転※
1945昭和20年3月 十七銀行など県内4行が合併し福岡銀行設立。福岡銀行福島本町支店となる
1954昭和29年8月 市制施行に伴い八女支店に改称
1955昭和30年4月 現在地へ移転
1970年代後半?   店舗を新築し、現在に至る

<建築用途の変遷>
1933昭和8年    銀行支店として竣工
1955昭和30年~  テナントビルに転用。1階に食堂、2階にビリヤード場が入居
1955昭和30年~  食堂がケーキ店に転業。婦人服店、文具店が1階に入居
1955昭和30年~  ケーキ店が閉店し、自転車店が入居。ビリヤード場閉鎖
1989平成元年~   文具店が閉店
2007平成19年~  自転車店が閉店、現在に至る


用途の変遷は証言に依るところが大きいものの、支店の沿革については、現在の福岡銀行八女支店(上写真)にそのまま繋がっていることが資料で確認できました。なお福岡銀行八女支店は県道96号沿い、土橋交差点から200mほど西へ進んだ所に立地しています。

(撮影年月:2015年7月)

【参考文献】
『株式会社十七銀行六十年史』 1940年/株式会社十七銀行 六十年史編纂委員会/同左
『福岡銀行二十年史』『付編』 1969年、1970年/福岡銀行/同左

【参考リンク】
多摩地区そして日本各地の画像集 > 福岡県 > 八女福島
西日本 近代建築万華鏡 > 八女市

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