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直方市の街並み(前編)  

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▲直方市出身の元大関魁皇(現浅香山親方)の銅像

今年の8月某日、直方市中心部の街並みを歩いてきました。

直方(のおがた)は福岡県筑豊地方の北部に位置する市。石炭産業で栄えた同地方において特に発展していた3都市、いわゆる「筑豊三炭都」(※)の一つです。加えて直方は北九州に近いことから、北九州へと輸送される石炭の一大集積地、また炭鉱に関連する鉄工業が盛んな工業都市といった性格も有していました。

※他の2市は飯塚市と田川市。この「三炭都」は単に有力な炭鉱が立地しているだけでなく、それぞれの地域における中心都市という意味合いも含まれており、直方・飯塚・田川はそれぞれ鞍手・嘉穂・田川の旧郡域の中心にあたる

そのため往年の繁栄ぶりは相当なものだったようで、当時の雰囲気を伝えるレトロな建物が数多く残されているのも、直方の街の大きな特徴です。今回の街歩きでは、これらの建築群をはじめ様々なものを見てきたので、過去に撮影した写真も数点交えつつ、前後2編にわたって紹介したいと思います。前編の今回は旅の起点である直方駅と、その近くの古町、殿町エリアの物件を。


<直方市の街並み・前編 直方駅~古町~殿町エリア>

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直方駅
福岡県直方市山部226-2

JR筑豊本線(愛称・福北ゆたか線)と平成筑豊鉄道伊田線の駅。かつては石炭輸送の中継基地としての役割を担い、構内には機関区が置かれていました。機関区の廃止後は跡地に電車の車両基地が整備されており、現在も運行の拠点となっています。

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数年前に写真の橋上駅舎(鉄骨造2階建)が完成し、それ以前に使用されていた1910(明治43)年竣工の木造駅舎は解体されてしまいました。解体前の旧駅舎についてはこちらのブログで紹介されています。

西洋館散策ぶらり旅 > JR直方駅

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西鉄直方バスセンター (旧 西日本鉄道直方自動車営業所)
福岡県直方市古町17-41/1960昭和35年4月完成/鉄筋コンクリート造2階建

直方駅の斜め向かいにある西鉄のバスセンター。『直方市史』(下巻、1978年)によると、営業所の社屋を兼ねて1960年に建てられたとのこと。

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1階両側のピロティや2階の水平連続窓など、どことなくル・コルビュジエ設計のサヴォア邸を思わせる(?)モダンな建物です。竣工当初はさぞかし衆目を集めたことでしょう。

建築マップ > フランス > サヴォア邸

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ピロティ部分はバスの出入口で、中央の空間に乗降場・待合所・窓口などが集約されています。なお、直方駅の旧駅舎跡に路線バス乗り場が整備されたため、現在バスセンターを発着するのは高速バスが主体であるようです。

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古町の商業建築
直方市古町16-1/明治~昭和戦前/木造2階建

直方駅前から東へ伸びる明治町商店街の商業建築。向かって右手は空き店舗(旧食堂?)、左手に洋菓子店が入居します。

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かなり手は加えられているものの、2階に並ぶ縦長窓や軒の造りから戦前の建物と思われます。航空写真で屋根を見ると右手(西側)が寄棟、左手(東側)が切妻となっており、もともとはより大きな建物だったようです。

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さらに裏手には土蔵のような建物(飲食店)がくっ付いています。こちらの飲食店含め、当初の姿が気になるところです。

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古町の商業建築(2)
直方市古町5-39/大正~昭和戦前/木造2階建

明治町商店街を進んだ先、古町商店街(ふるまち通り)との交差部にある建物。写真手前部分に食堂が入居、右奥は空き店舗(旧美容室?)です。

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これまた改造が著しいですが、北側2階の外観についてはほぼ原型を留めており、中々装飾的な建物であったことが見て取れます。パラペットにある「ロング館」は当初の名称でしょうか。

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向かい側には軒に銅板を張った漆喰壁の和風建築があり、旧ロング館と好対照をなしています。

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料亭佐賀屋
直方市古町16-10/明治~昭和戦後期?/木造2階建など

主要な道路から少し入った場所にある料亭の建物。恐らくは直方を代表する老舗料亭と思われますが、創業年などの情報は未確認。

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通りに面した部分は目地を切ったモルタルをベースに、石や木材で賑やかに飾られています。

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増築を重ねたのか建物はやや複雑な造りをしており、外装の仕上げ方もいくつか種類があるようです。これらはいずれも戦後の雰囲気ですが、建物自体の竣工時期はもう少し古いかもしれません。

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古町の建物 (旧料亭)
直方市古町12/昭和戦後期?/木造2階建

十字路の角に建つ風変りな建物。たまたま通りかかった老婦人のお話だと、これもかつては料亭だったのだとか。

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基壇の表現やパラペットを立ち上げている点は全体に共通しますが…表通り側は開口部にアーチ、腰回りに出節丸太を使用し、壁面は鎧壁仕上げ。一方の路地側は腰回りを石張りとし、パラペット頂部に雷紋模様を巡らせるなど、立面によってデザインを変えているのが特徴です。

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さらに路地側では玄関直上に紋章(?)を掲げ、パラペットをもう一段突き出しています。頂部に懸魚(げぎょ)らしき意匠があることから、恐らく和風建築の破風をイメージしているのでしょう。

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片桐商店
直方市古町10-1/昭和戦後期?/木造2階建

旧料亭の向かい。

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大部分がパネルに覆われているものの、切り落とされた角に張り付く一対の円柱が印象的。旧料亭と同時期の竣工と思われます。

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もち吉ビル (旧 直方ショッピングバザール)
直方市古町5-32/1977昭和52年/鉄筋コンクリート造地上4階地下1階建

ふるまち通り内にあるビル。もともとは地場総合スーパーのユニード直方店で、合併によりダイエーとなったのち95(平成7)年に閉店。訪問時はお盆だったのでシャッターが下りていましたが、現在は飲食店が入居するほか、イベントスペースとしても使用されているようです。

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商店街を出て県道27号よりビル全景。現在は地元の米菓メーカー・もち吉の所有となっており、塔屋看板には同社のロゴが掲げられています。

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福岡ひびき信用金庫直方支店 (旧 直方信用金庫本店)
直方市古町11-7/1966昭和41年/鉄筋コンクリート造3階建?

ふるまち通り西側に並行する通り沿い。もともとは直方信用金庫の本店営業部でしたが、2003(平成15)年に福岡ひびき信用金庫(本店・北九州市)と合併し同庫の直方支店となりました。

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建物は当初タイル張りだった部分が塗り込められており、特に見所がある訳ではありませんが、かつての金融機関本店ということで紹介させて頂いた次第です。

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福岡県住宅供給公社西町団地 (旧 福岡県住宅協会西町団地)
直方市古町11-11/1958昭和33年度/鉄筋コンクリート造4階建

JRと平成筑豊鉄道を跨ぐ御館橋(県道467号)のたもとにある建物。1階が店舗、2階以上は住宅という構成で、竣工は1958(昭和33)年度とのことです。ちなみに元請けかどうかは分かりませんが、岩崎建設(本社・福岡市)百年史の工事経歴に「直方西町団地建設工事」の記載があります。

ALL-A > 団地・集合住宅 > 公社・住宅協会 > 西町団地

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建物は南北に細長い造りで、両端部の階段室にそれぞれ異なるデザインを用いているのが特徴です。表玄関にあたる南側の階段室は窓を大きくとった開放的なデザイン。

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一方の北側では、階段の側壁に円形の穴を並べています。穴は9×4列の配置ですが、半数近くは壁面を凹ませただけのものです。

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アートスペース谷尾 (旧 十七銀行直方支店)
直方市古町10-20/大正期/煉瓦造2階建
※国登録有形文化財、経済産業省認定近代化産業遺産

ふるまち通りと県道467号の交差部角にある瀟洒な建物。大正時代に建てられた煉瓦造・タイル張りの旧銀行建築です。

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戦前は主に十七銀行直方支店として、戦後は長らく福岡銀行直方南支店として使用されたもので、現在は直方市美術館別館「アートスペース谷尾」となっています。施設の詳細は公式HPを参照ください。

直方谷尾美術館 > アートスペース谷尾

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竣工当初は角の張り出し部にドーム屋根を戴く塔屋が、また建物の頂部にはパラペットが存在しましたが、商店街へのアーケード設置(戦後)に際して失われています。とはいえ現状でも建築物としての価値は十分にあり、2013年に国の有形文化財に登録されたほか、経済産業省認定の近代化産業遺産群の構成遺産にもなっています。

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菓舗四宮
直方市殿町16-27/昭和戦前/木造2階建

県道467号を境に北側が古町、南側が殿町と分かれており、古町から続く商店街も殿町商店街(とのまち通り)と名を変えますが、アーケードは150mほど下った先で途切れます。その末端部の角にあるのがこの建物。

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緩やかなアールを描く壁面は小さなタイルで覆われ、窓回りや庇はモルタル仕上げ。

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さらに階段室と思われる部分には、菱形の窓が3つ配されています。上に行くにつれて大きくなっていたり、配置がやや変則的であったりと、一見シンプルなようで外観を印象付ける重要な要素となっています。現在はアーケード側がかなり改造されていますが、当初は人目を引くモダンな建物であったことでしょう。

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川中保険事務所
直方市殿町8/大正~昭和戦前/木造2階建

脇道に少し入った所にある建物。切妻平入りの和風建築の左手前に、半切妻の2階建て洋館が張り出しています。

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洋館は横目地を入れたモルタル外装(洗い出し仕上げ)で、庇と窓台を共有する一対の縦長窓が2階のやや高い位置に付きます。1階部分が改装されている影響もありますが、さほど装飾的な外観ではないので、恐らく昭和に入ってからの建物だと思います。

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向野堅一記念館 (旧 讃井病院)
直方市殿町12-19/1922大正11年/木造2階建
※国登録有形文化財

殿町通りに戻ります。十字路角に立ち上がる塔屋が印象的なこの洋館は、1922(大正11)年に建てられた旧医院建築。現在は郷土出身の実業家・向野堅一(こうの けんいち)を顕彰する施設となっています。

向野堅一記念館 (公式HP)

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左手にも一応は翼部を張り出しているものの、右手の角(建物北東)に塔屋を設け、そのすぐ脇に玄関を配しています。このためやや右への偏りが目立つ左右非対称の外観になっていますが、これは街の中心部(建物の北側)から見られることに重きを置いた結果なのでしょうね。

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屋根回りはパラペットを巡らせ陸屋根風に見せており、モルタル外装と相まって木造ながら重厚な雰囲気となっています。ちなみに外装について、現在は明るい灰色一色に塗り込められていますが、当初は塔屋や窓間などの吹き付け部分が濃い灰色~黒色で、その他の部分(横目地を入れた洗い出し仕上げ)とのコントラストを際立たせていたようです。

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武内歯科
直方市殿町12-15/1950年代?/木造平屋建

旧讃井病院の裏手(西側)に隣接する歯科医院の建物。

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一見どこにでもある小さな建物ですが、玄関脇にはちょっと珍しい張り方のタイル円柱が。

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他にも窓の構造や外壁の仕上げ方など、よくよく見ると変わった造りをしています。

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石原商店
直方市殿町12-22/1926大正15年/木造2階建
※国登録有形文化財

再び殿町通り沿い、緩やかなカーブに面して並び立つ2棟の近代和風建築。向かって右側が石原商店です。

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店舗部分は一部吹き抜けで回廊が付いており、1階間口と2階の間にも小窓を巡らせているため、2階建てながら3層に区切られた少々特異な外観となっています。

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前田園茶舗本店
直方市殿町12-23/1927昭和2年頃/木造2階建
※国登録有形文化財

左隣は前田園茶舗本店。こちらは比較的オーソドックスなスタイルの町家ですが、2階の下半分にも銅板を張り、また屋根材に石州瓦(※)を用いているのが特徴です。

※島根県西部の石見(いわみ)地方で生産される赤褐色の瓦

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ちなみにふるまち通り内には古町店(写真)を構えているのですが、正面は改装されているものの、そちらも中々に風情のある建物でした。

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江浦耳鼻咽喉科医院
直方市殿町10-38/1901明治34年/木造2階建

前田園本店の斜め向かい。淡い水色に塗られた板壁が爽やかな木造洋館で、建具や門を含め良好な状態で残されています。

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1901(明治34)年という竣工時期の古さに加え、医院として現役であるというのだから、ただただ驚くばかりです。そうした意味では市内の数ある近代建築の中でも、最も貴重な存在だといえるかもしれません。

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直方谷尾美術館 (旧 奥野医院)
直方市殿町10-35/1941昭和16年頃/木造2階建
※国登録有形文化財、経産省認定近代化産業遺産

江浦医院と同じ並び。一見地味な佇まいですが、いざ見学してみると実に素晴らしい建物でした。という訳で、この建物については後日改めて紹介します。

(2017年1月追記)記事を作成しました直方谷尾美術館

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白石内科医院
直方市殿町11-18/大正~昭和戦前/木造2階建

これも同じ通り沿い。半切妻屋根の医院建築です。

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正面・側面とも改装がやや目立つものの、ドイツ壁風のモルタル仕上げや高い腰壁、そして縦長窓などに建物の古さが表れています。

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2階の窓が1階のそれに比べて小さく、またアルミ製の手すりが2階にのみ設置されているのを見ると、竣工当初の内部は吹き抜けだったのではないかと思います。

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殿町の住宅
昭和戦前~戦後期?/木造平屋建

裏通りにある住宅。さほど古そうには見えないのですが…

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スペイン瓦で葺かれたベイウィンドウが正面右手に付いています。

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太陽堂
直方市殿町15-21/明治~昭和戦前/木造2階建

殿町通りの西側、鉄道に沿って伸びる通りにある看板店の建物。

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見た感じ外装はほとんど原型を留めていないものの、2階には上げ下げ式の縦長窓が並んでおり、古い建物であることには違いないようです。

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※2012年5月撮影

裏側には一回り小さい付属棟があり、隣の町家との間には煉瓦塀も付いています。建物自体の規模も店舗にしては大きく、当初の外観や用途が気になります。

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※2014年6月撮影
殿町の煉瓦造建築 (旧 筑豊興業鉄道直方駅倉庫?)
直方市殿町1/1890年代?/煉瓦造平屋建

少し北へ戻りますが御館橋の近く、線路のすぐ脇にある煉瓦造の小さな建物。現在の直方駅は旧駅舎の建築と同時期に移転してきたもので、開業当初はこの辺りに駅があり、この建物は駅の倉庫として使用されていたそうです。

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※2014年6月撮影

開口部を拡張した影響からか正面上部に亀裂が入っていますが、側背面については特に異状もなく、年季の入った煉瓦建築特有の重厚さが感じられますね。

(続く)


大きな地図で見る ※個人所有の住宅はマップに反映させていません

(撮影年月・2015年8月)

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