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旧 住友銀行若松支店  


旧 住友銀行若松支店
福岡県北九州市若松区本町2丁目/1897年/木骨煉瓦造2階建

明けましておめでとうございます。2016年最初の記事となる今回は、昨年末に訪れたばかりの旧・住友銀行若松支店をご紹介します。福岡県内の銀行建築としては現存最古とされ、また19世紀における本格的な洋風建築の現存例という意味でも希少な建物ですが、老朽化により近く解体されるとの報道が。

さらば「明治の銀行」 福岡県内最古 築118年旧住銀若松支店 地元団体「維持困難」解体へ(西日本新聞)

記事には「買い手が見つからなければ2016年2月をめどに解体開始」とありますが、できるだけ早めに見ておこうと思い、年明け前に行ってきました。

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※『住友銀行三十年史』(1926年)168頁より。画像クリックで新規タブ/ウィンドウへ移動

竣工は1897(明治30)年。支店の開設から1年余りでこの建物が新築されていることから、北九州での営業に本腰を入れるにあたり、開設当初の応急的な店舗に代わって建てられたものと思われます。竣工の数年後には火災に遭っているものの、直ちに改修を行って再入居しており、1967(昭和42)年7月16日の支店廃止まで継続使用されました。その後、地元商店街が土地と建物を買い取り、商店に転用していましたが、数年前から空き店舗になっているとのことです。

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※グーグルマップより(一部加工)。画像クリックでグーグルマップのページへ移動

グーグルマップの3D表示で見た旧・住友銀行若松支店(オレンジ色の線で囲った部分)。建物は北側の商店街(エスト本町)に面しており、ファサード側からは後年設置されたアーケードに遮られて全体像が全く掴めません。

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※グーグルマップより

ただ、正面向かって左隣(東側、画像手前)の敷地が広場になっているため、東面については一転して見やすい状態にあります。

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ということで、これより建物の現状を東面から見ていきます。敷地奥にくっ付いているトタン葺きの部分、それと広場側に張り出した平屋建ての部分は戦後の増築。

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これら増築部に埋もれるようにして存在する、スレート葺き・モザイクタイル貼りの部分こそが、かつて住友銀行若松支店であった建物です。先程の『住友銀行三十年史』掲載の古写真と比較すると、屋根のドーマーが無くなっていたり、外壁材が変更されていたりと、当時の姿とはかけ離れているように思えますが…

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北東角の部分に注目。竣工当初は玄関が設けられていた面ですが、ここは比較的原型を留めています。

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まず目に付くのは両隅にあしらわれた隅石(コーナーストーン)。古写真では城郭の石垣でいうところの「算木積み」(参考写真=府内城、大分市)のように、長辺と短辺が互い違いに組まれていますが、現在はすべて同じ幅に納まっています。石の数は変わっていないので、どうやら改修によって両端が切り縮められているようです。

参考までに、互い違いになったコーナーストーンの例。佐賀市内にある水管橋の橋台(写真

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軒回りは当初の仕様がよく残っています。上部はサイマリヴァーサ(cyma reversa)と呼ばれるS字断面の仕上げ方。

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また、窓はまぐさ部分の装飾が失われているものの、窓台と鉄扉はそのままのようです。

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東面でも同様に軒回り、窓台・鉄扉については原型を留めています。

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窓の詳細。手前の枝に少々遮られますが、鉄扉が開いている様子。

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同じく、閉まっている様子。

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建物の後方は一段低くなっています。恐らく商店街側の高い方は吹き抜け空間を有する営業室で、こちらは金庫室だったのでしょう。

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一回り小さな窓。鉄扉は備えておらず、代わりにシャッターが付いています(オリジナルかどうかは不明)。

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営業室と金庫室の接続部分。

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建物の裏側へ移動します。

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余談ですが、敷地奥の増築部分もそこそこ古そうです。

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本題に戻って、建物裏側の全景。

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営業室はマンサード屋根(緩勾配の上段と急勾配の下段に分かれた寄棟屋根)となっています。

参考までに、マンサード屋根を採用した明治期の建築の例。福岡市中央区西中洲の旧福岡県公会堂貴賓館(写真

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金庫室の方は寄棟屋根。南面にはプレハブの建物が張り付いていますが…

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西面では、鉄扉を備えた縦長窓が辛うじて窺えます。壁面に取り付けられた部材は何でしょうか。

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続いてアーケード側(北面)の様子。中央右のオレンジ色の建物が旧・住友銀行若松支店です。

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敷地手前に張り出すようにして増築され、幅いっぱいに商店の入口が設けられるなど、改造が著しいです。

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しかし、ここでもひっそりとコーナーストーンが。

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さらに足元に目をやると、同じく石材で仕上げられた基壇部も確認できました。

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訪れる前は建物本体に著しく改造がなされているものと思っていましたが、実際には当初の外観がそこかしこに見え隠れしており、意外と原型を留めているような印象さえ受けます。現在のような変わり果てた姿になったのは、むしろ周囲を埋め尽くすようにして行われた増築と、アーケード設置に伴う改装に起因するところが大きいのではないでしょうか。

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最後に、商店街を抜けて西側より遠景。

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マンサードの上段を見ようと距離をとってみましたが、結局地上からは窺えませんでした。

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冒頭で取り上げた西日本新聞の記事によると、“3500万円で買い手を探しており、見つからない場合は来年2月をめどに解体に着手する” とのことです。仮に買い手が見つかったとしても、そもそもの問題である老朽化がある以上それで終わりとはいきませんし…古い建物を維持することの難しさを改めて考えさせられると同時に、今日まで建物が残っていたのはとても有難いことであると痛感します。自分は買い手に回ることはまずできないので、せめてそのような幸運な建物を一つでも多く紹介できれば、と思います。

以上、旧・住友銀行若松支店でした。それでは今年もよろしくお願いします。

(撮影年月・2015年12月)

【参考文献】
『住友銀行三十年史』 住友銀行/同左/1926年
『北九州の近代化遺産』 北九州地域史研究会/弦書房/2006年

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