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福岡中央銀行清川支店  


福岡中央銀行清川支店 (旧 正金相互銀行清川支店)
福岡市中央区清川1丁目12-3/1969昭和44年?/鉄筋コンクリート造地上2階地下1階建

久しぶりに福岡市の建物を紹介します。住吉通りの清川交差点から少し入った所、清川ロータリーへと続く通り沿いにある福岡中央銀行清川支店です。

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福岡中央銀行は福岡市に本店を置く第二地方銀行(同行の概要は記事末参照)。今回取り上げる清川支店の建物は、同行が「正金相互銀行」と名乗っていた時代に建てられました。

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『正金相互銀行二十五年史』(1977年)によると、清川支店はもともと渡辺通支店として1953(昭和28)年に開設。その後、69(同44)年に現在地へ移転し、同時に現店名に改称したとのことです。同書の支店沿革では「新築移転」という表現が使用されていないため、建築時期については定かではありませんが…現在見られる建物の写真が既に掲載されていること、また店舗移転から社史制作までの僅かな期間に建て替えが行われたとは考えにくいことから、恐らく1969年の移転に伴って建てられたものと思われます。

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それでは建物を見ていきましょう。ベースは単純な箱型ですが、正面(ファサード)は外壁を内側にくり抜いたような少々複雑なデザイン。当時の銀行の建物としてはかなりモダンな部類に入ります。

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両側を別の建物に挟まれ、裏側は狭い路地に面する細長い敷地に建っており、実質的に正面以外の三方は閉ざされたような状態です。加えてファサードは北東を向いているため、営業時間中はほとんど陰になってしまいます。

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恐らくこのような特異なデザインが採用されたのは、そうした立地が大いに関係しているのでしょう。実際、前掲書で他の支店の写真にも目を通しましたが、清川支店のようなデザインは類を見ませんでした。

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外観を詳しく見ていきます。外壁面は頂部、2階、1階といった具合に段階的に後退しており…

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正面右手、いちばん奥まったところに玄関が設けられています。

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また壁面の折り返し部分をはじめ、随所に曲線・曲面を多用しているのも大きな特徴です。

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こうしたデザインからか身体が自然に玄関へ、すなわち建物の内部へと向かっていくような印象を受けます。顧客を吸い寄せるというか招き入れるというか、そのような意味合いも含まれているのかもしれません。

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いったん全景に戻ります。

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建物2階は恐らく事務室。

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1階は営業室。窓口の営業時間はHPの店舗案内に記載がありませんが、ATMコーナー(左手前)については平日のみ9~18時の稼働とのことです。

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そしてATMコーナーの真下には地階駐車場への出入口があります。竣工当時はちょうどモータリゼーションが進んでいた頃でしょうか。

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再び接近。

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入口は道路側と扉付近のみ石段で、間の大部分はスロープになっています。

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前掲書の写真でもスロープが確認できるので、階段を改修したのではなく、当初の仕様のようです。

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入って左手のATMコーナー入口。

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玄関手前より振り返る。一見不思議なデザインですが、基本的には玄関ポーチとしての機能があるのでしょう。

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窓の四隅もアールを描いています。

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最後に、裏側の写真を数点。

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右側面は外装色が異なります。大部分はベージュに塗られていますが、こちらが当初の色でしょうか。

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そもそも昔の銀行が古典様式による重厚なデザインを多用したのは、某都市銀行曰く「顧客に信頼感を与えること」が目的だそうで、恐らく昭和初期の金融恐慌や戦後の混乱が背景にあったのだと思います。そうした不安が高度経済成長の中で薄れていき、また所得の向上によって銀行の大衆化が進むと、イメージ刷新もあって古典様式は次第に廃れるのですが、代わって登場した店舗には単に従来の様式から装飾を排しただけのものや、平々凡々なビル型の建物も多々ありました。

そんな中でモダンな外観を纏いつつ駐車場も備えたこの建物は、デザイン・機能の両面で全く新しい銀行建築として、当時の人々を驚かせたことでしょう。ちなみに建物が立地する清川は旧遊郭街で、かつての「新柳町」という町名から改称されたのは遊郭全廃後の1962(昭和37)年のこと。こうした斬新な建物の出現も、地域のイメージアップに貢献したかもしれません。

以上、福岡中央銀行清川支店(旧・正金相互銀行清川支店)でした。


(おまけ…福岡中央銀行について)

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▲福岡中央銀行本店(福岡市中央区大名2丁目12-1)

福岡中央銀行は福岡県内に41店舗(本支店39、出張所2)を展開する第二地方銀行です。福岡銀行(本店写真)や西日本シティ銀行(本店写真)ほど店舗数が多くないため、県内在住の方にとってもあまり馴染みのない存在かもしれませんが、「福岡ソフトバンクホークスの本多雄一選手がCMに出ている銀行」といえば分かりやすいでしょうか。

福岡中央銀行の創立は1951(昭和26)年6月。福岡市に本店を置く第一殖産無尽と、当時の小倉市(現・北九州市)に本店を置く西部殖産無尽が合併し、正金殖産無尽(しょうきんしょくさんむじん)が設立されたことに始まります。この「正金」なる社名の由来ですが…設立当時の社長がかつて朝鮮銀行(※1)に在職しており、横浜正金銀行(※2)の飛躍的な発展を間近に見ていたため、その名にあやかって命名したそうです。

※1…日韓併合後の1911(明治44)年に設立された特殊銀行。併合直前に第一銀行から業務を移管して設立された銀行を改組したもので、日本統治下の朝鮮における中央銀行として機能した。敗戦後に閉鎖機関に指定されて解散し、接収された資産の一部は現在の韓国の中央銀行である韓国銀行と、同じく北朝鮮の朝鮮中央銀行に引き継がれている

※2…1880(明治13)年に創立された、貿易金融・外国為替を専業とする特殊銀行。「正金」とは現金を意味する。アジアを中心に世界各地へ展開し、「世界三大為替銀行」の一角に数えられるまでに成長した。敗戦後に閉鎖機関に指定されて解散するが、1946(昭和21)年設立の東京銀行が業務を継承。東京銀行は三菱銀行との合併などを経て、現在は三菱東京UFJ銀行となっている

相互銀行法の制定・施行を受け、設立翌年の52(同27)年に商号を正金相互銀行へ変更。相互銀行とはかつて存在した金融機関の業態で、業務内容は中小企業向けである点を除けば普通銀行(都市銀行や地方銀行)とほぼ同じですが、営業区域などに制限がありました。その後、経済成長による事業規模の拡大や金融自由化の流れを受け、規制の少ない普通銀行への転換が認められると、ほとんどの相互銀行は89(平成元)年2月に一斉に普通銀行(第二地方銀行)へ転換します。正金相互銀行もこのとき転換し、同時に福岡中央銀行と改称して現在に至ってます。

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▲正金ビル跡地に建つミーナ天神(福岡市中央区天神4丁目3-8)

現在の本店は1990(平成2)年に新築されたもの。設立当初は旧第一殖産無尽の社屋を本店としていましたが、これが手狭となったため、相互銀行となったのを機に本店を「正金ビル」に移転させます。その正金ビルとは、昭和初期に開業した旧・松屋デパート(※3)の建物のこと。接収解除を受けて正金相互銀行が建物全体を賃借し、管理会社設立のうえ1階と2階を本店、3階以上は貸し室として使用していました。

※3…1929(昭和4)年に木造3階建ての店舗で開業した、福岡市の天神地区における最初の百貨店。32(同7)年にはRC造6階建てのビルに建て替えられるが、戦時統制により廃業し、建物は軍需工場へ転用、さらに敗戦後はGHQに接収された。接収解除と正金相互銀行への貸与などを経て、73(同48)年にファッションビル「マツヤレディス」を新築・開業。2005(平成17)年からはファーストリテイリングの商業施設であるミーナ(mina)が入居し、「ミーナ天神」となって現在に至る

しかし、建物の規模が大き過ぎたことが災いし、正金ビルの賃貸・運用が銀行の経営状態を悪化させます。1959(昭和34)年には現在地にRC造4階建ての本店を新築して移転。正金ビルは僅か7年足らずで手放すことになりました。

なお、現在の福岡中央銀行は福岡銀行と密接な関係にあるのですが、正金ビルを巡る経営悪化によって取引銀行である福岡銀行への依存を強めたことが、その遠因となっているようです。ちなみに「密接な関係」とは、福岡銀行が福岡中央銀行の筆頭株主(14.69%保有)だったり、福岡中央銀行の頭取が現在まで6代連続で福岡銀行出身だったり、といった具合で…熊本銀行(本店・熊本市)や親和銀行(本店・長崎県佐世保市)を傘下に収めるFFG(ふくおかフィナンシャルグループ)に福岡中央銀行の姿がないことが、素人目には少々不思議なことに映ってしまいます。

【撮影年月】
2014年5月)001、002
2015年10月)003~006
2015年11月)007~030

【参考文献】
『正金相互銀行二十五年史』 正金相互銀行二十五年史編纂委員会/正金相互銀行/1977年

【参考リンク】
福岡中央銀行 > 福岡中央銀行について > 会社情報
福岡中央銀頭取に古村専務 (日本経済新聞)

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2016/06/30 23:49 | edit

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