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銀行建築巡り in北九州(前編)  



2か月近く前のこと。人も景色も忙しそうな、年末の北九州市へ行ってきました。

お目当ては銀行などの金融機関の建物。当然ながら、単に金融機関であれば何でもという訳ではなく、いわゆる「銀行建築」を見て回ることが目的です。当日は朝の8時前にJR門司港駅(同市門司区)に到着して行動開始。市内の移動には西鉄バス北九州の1日フリー乗車券を使用し、門司→小倉→若松→戸畑→八幡といった順に概ね東から西へと進みつつ、北九州市の銀行建築を巡りました。

北九州都市圏一日乗り放題!1日フリー乗車券 (西鉄バス北九州HP)

なお、素人による独断的な定義ですが…以下の条件をいずれも満たす建築物を「銀行建築」としています。

1.現在の用途の如何を問わず、金融機関の営業所(本店・支店・出張所など)として建てられたもの
2.近代(明治~昭和戦前戦中)に建てられたもの、または戦後から昭和40年代までに建てられ、外観に古典様式を採用したり、様式の名残(対称性・列柱・目地など)が見られたりするもの


このたび見てきた銀行建築の総数は21件。各建物につき写真を2枚と基礎情報、さらに営業所の沿革と外観の特徴を記しつつ、前後2編にわたってご紹介します。前編の今回は、門司区から若松区までの計10件を。


◆凡例

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建築当初の名称
(現在の名称)
所在地/営業開始年月/構造と階数
設計者 施工者  ※文化財指定など

当ブログの通常記事とは異なり、建築当初の名称を優先して現名称は括弧内に表記し、また基礎情報に竣工年ではなく営業開始年月(当該建物での営業が開始された年月)を採用した。なお、設計者及び施工者は判明している場合にのみ、また文化財保護法や景観法等に関しては、指定・登録を受けているものに限りそれぞれ記す。


◆門司区(7件)

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横浜正金銀行門司支店
(現 北九州銀行門司支店)

福岡県北九州市門司区清滝2丁目3-4/1935年2月/鉄筋コンクリート造2階建
設計:桜井小太郎 施工:竹中工務店  ※北九州市都市景観資源、景観重要建造物

貿易金融・外国為替を専業とする特殊銀行・横浜正金銀行の門司支店の建物。支店開設翌年の1935(昭和10)年2月25日より、2代目の店舗として営業を開始しました。戦後は同行の後身である東京銀行が引き続き使用しますが、61(同36)年9月いっぱいで閉鎖。直後に山口銀行(本店・山口県下関市)が建物と一部従業員を譲り受けて同行門司支店が移転入居し、2011(平成23)年10月から北九州銀行と名前が変わって現在に至ります。

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壁面に石材を張った石造り風の外観で、玄関両側に伸びる一対のトスカナ式オーダーと、窓の上に嵌め込まれた花綱飾りのレリーフが特徴。竣工当初の美しい姿をよく留めており、現存するものでは北九州市を代表する銀行建築といえます。なお建物は市の条例に基づく「都市景観資源」、また景観法の「景観重要建造物」に指定されています。

bbk092.jpg※2015年4月撮影
富士銀行門司支店
(現 みずほ銀行北九州支店門司出張所)

北九州市門司区栄町2-2/1961年6月/鉄筋コンクリート造3階建?

旧安田財閥系の都市銀行・富士銀行の門司支店の建物。日本商業銀行による開設(1896・明治29)から数えて4代目の店舗で、1961(昭和36)年6月5日より営業を開始し、現在も同行の後身である みずほ銀行の店舗として現役です。ただし富士銀行時代の末期、1982~2002年頃に北九州支店(小倉北区、写真)の出張所に降格しています。

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1960年代ということで一見普通のビルのようですが、通り側2面に6×4列の窓を配置し、列柱や軒に見立てた部分には目地を切っています。外壁の塗り分けは後年の改装によるもので、当初はもう少し石造り風の雰囲気だったのではと思います。

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福岡銀行門司支店
(現 マリーゴールド門司港迎賓館)

北九州市門司区港町2-21/1951年2月/鉄筋コンクリート造3階建
設計:徳永建築設計事務所 施工:清水建設

福岡市に本店を置く地方銀行・福岡銀行の門司支店の建物。1951(昭和26)年2月5日より営業を開始しますが、その後(1969年以降)同支店は向かい側の旧住友銀行に移転。建物は日本船舶通信のオフィスなどを経て、現在は結婚式場として使用されています。

北九州・門司港の結婚式場・ウェディング|マリーゴールド門司港迎賓館 (公式HP)

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設計は戦前から戦後にかけて活躍した建築家・徳永庸の主宰する徳永建築設計事務所。氏は戦後の一時期に福岡銀行の嘱託となり、古典様式による支店を多数手掛けています。門司支店の建物は他のRC造の店舗と同様に、ドリス式(ドーリア式)のオーダーを通り側2面に並べた重厚なデザインが特徴。現状は外壁の上塗りや建具の交換などが目に付きますが、当初の外観を著しく損なっているという程でもなく、むしろ手を加えてまで建物を活用してくれていることに感謝すべきでしょう。

なお、ここまで紹介した3件はいずれも門司港レトロ地区付近、国道3号沿いに建っています。

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門司市信用金庫葛葉支店?
(現 オレンジ薬局)

北九州市門司区葛葉2丁目3-8/1950年代前半?/木造平屋建

門司港レトロ地区からバスで10分ほど、同じく国道3号沿いにある建物。もともと同区に本店を置く門司信用金庫(※1)の葛葉(くずは)支店だったもので、福岡ひびき信用金庫への合併後、2004(平成16)年11月15日に近隣の支店に統合・廃止されているようです。現在は薬局が入居しています。

※1…産業組合法に基づく市街地信用組合「有限責任 門司信用組合」として1923(大正12)年設立。信用金庫法の制定・施行を受けて51(昭和26)年に門司市信用金庫となり、5市合併により北九州市が誕生した63(同38)年には門司信用金庫と改称。2003(平成15)年、県北部の他3庫とともに福岡ひびき信用金庫(本店・同市八幡西区)と合併した

福岡ひびき信用金庫 店舗網再編 (Wikipedia)

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小規模ながら左右対称のファサードを持ち、また当初はモルタルに目地を切った外壁であったことが側面から見て取れます。これらのデザインから1950年代前半(昭和20年代後半)、門司市信用金庫時代の建築ではと思いますが、どうでしょう。

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大分銀行大里支店
(現 岡野商事株式会社)

北九州市門司区中町1-17/1954年2月/鉄筋コンクリート造2階建
設計施工:佐伯建設工業

前物件からさらにバスで10分ほど、JR門司駅付近の国道3号沿いにある建物。大分県の地銀・大分銀行の大里(だいり)支店として1954(昭和29)年2月4日に営業を開始し、門司駅前支店への改称を経て、78(同53)年7月10日に向かい側の新店舗(写真)へ移転するまで使用されていました。現在は隣接する岡野バルブ製造の関連会社が入居しています。

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ほぼ左右対称のファサードに縦溝(フルーティング)が施された一対の付け柱(ピラスター)など、古典様式の名残をそこかしこに感じる一方で、正面両側に5つずつ配された小窓からはモダンな印象を受けます。ちなみに現存しませんが、同行の近隣2支店(門司・小倉)の建物にも同系統のデザインが用いられていたようで、うち門司支店は同じく現・佐伯建設の設計施工とのことです。

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福岡銀行大里支店
(現 岡野バルブ製造株式会社施設)

北九州市門司区中町1-19/1950年2月/木造2階建
設計:徳永建築設計事務所

大分銀行に隣接する、福岡銀行大里支店の建物。前身行の十七銀行による開設(1943・昭和18)以来2代目の店舗で、1950(昭和25)年9月11日より営業を開始しました。現在は200m先の門司駅正面に門司駅前支店(写真)が存在し、こちらの建物は岡野バルブの施設となっています。移転・改称の時期はともに未確認ですが、現在の店舗は2008(平成20)年に同位置にて建て替えられたものなので、数十年ほど前には既に移転していたと思われます。

福岡銀行 > 過去のお知らせ > 門司駅前支店の新店舗リニューアルオープンについて

bbk091.jpg※2014年6月撮影

前出の同行門司支店と同じく徳永建築設計事務所が手掛けた店舗の一つ。こちらも同様に古典様式による外観ですが、少々趣向を変えてトスカナ式のオーダーを正面にのみ用いています(側面はピラスター)。これは一連の作品群のうち木造の店舗に見られる特徴で、RC造・ドリス式と木造・トスカナ式という異なる2仕様が、門司区には両方とも残っていることになります。ちなみに他の現存例は確認できておらず、これらの姉妹作ともいうべき銀行建築が、これからも長く在り続けることを願わずにはいられません。

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門司信用金庫原町支店
(現 福岡ひびき信用金庫原町支店)

北九州市門司区原町別院8-20/1960年代?/鉄筋コンクリート造2階建

門司駅付近から歩いて10分ほど、国道3号から少し入った所。もともと門司信用金庫の原町(はらまち)支店だったもので、同庫から福岡ひびき信用金庫に引き継がれた中では数少ない現役の店舗です。

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窓が横いっぱいに取られており、またコーニスのような軒の造りもないことから、これまで取り上げた建物とは随分印象が異なります。しかし、がっしりと門型に囲った玄関を中央に設け、計12本(四隅と各面に2つ)の柱型を配するなど、対称性や垂直性を強調した外観となっています。葛葉支店と同じく建築時期は不明ですが、大体1960年代くらいではないでしょうか。


◆小倉北区(1件)

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佐賀銀行小倉支店
(同上)

北九州市小倉北区魚町3丁目4-10/1955年12月/鉄筋コンクリート造3階建?
設計:日建設計工務 施工:鹿島建設

前物件より20分ほどバスに揺られて小倉の中心部(JR小倉駅付近)、佐賀県の地銀・佐賀銀行の小倉支店の建物。佐賀興業銀行による開設(1953・昭和28)から数えて2代目の店舗で、佐賀中央銀行との合併による佐賀銀行設立の5か月後、1955(昭和30)年12月19日より営業を開始。以来、用途を変えることなく現在に至っています。

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※グーグルストリートビューより

基本的なデザインは前出の富士銀行門司支店に類似しますが、外壁材が石造り風のモルタルではなく、昭和中~後期の佐賀銀行店舗で多用されたこげ茶色のタイルなので、一見平凡なビルのようにも思えてしまいます。そのため訪問時は「ついで」に1枚だけ撮影していたのですが…設計者が住友銀行をはじめ多くの金融機関店舗を手掛けた日建設計工務(現・日建設計)であること、また1968(昭和43)年秋から半年間行われた増改築を経て現在の姿になったことを先日資料で確認したので、竣工当初の外観への期待も込めて取り上げた次第です。ちなみに周辺は北九州市の誕生後、百万都市の中心として更なる成長を遂げたため、ほとんどの銀行はビルの低層階に入居する形で建て替えられており、このように単独店舗のまま残っている例はほとんどありません。

近くの「資(すけ)さんうどん」で少し早い昼食をとった後、若戸大橋経由のバスに乗って約30分で一気に若松へ。なお、小倉南区は下調べの段階で銀行建築が見つからなかったため、今回の行程には入れていません。


◆若松区(2件)

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住友銀行若松支店
北九州市若松区本町2丁目13-26/1898年8月/煉瓦造2階建/2016年2月より解体予定

大阪に本店を置く大手銀行・住友銀行の若松支店の建物。開設翌年の1898(明治31)年8月4日に2代目店舗として営業を開始し、1967(昭和42)年7月16日の支店廃止まで使用されました。その後は長らく商店に転用され、いつしか県内では現存最古の銀行建築となりましたが、ついに老朽化によって維持が困難となり、近日中の解体を予定するに至ります。

なお、この建物については先日ひと足早く紹介済みですので、詳細はこちらの記事をご覧ください。

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山口銀行若松支店
(現 北九州銀行若松支店)

北九州市若松区中川町1-8/1963年10月/鉄筋コンクリート造3階建?

山口県の地銀・山口銀行の若松支店の建物。こちらも開設翌年に建てられた2代目の店舗で、1963(昭和38)年10月11日より営業を開始し、2011年に北九州銀行となって現在に至ります。ちなみに北九州銀行というのは、山口銀行の九州地方における業務を切り離し、北九州市に本店を置く地方銀行として新たに設立されたもの。母体となった山口銀行、広島市に本店を置く第二地銀・もみじ銀行などとともに、山口フィナンシャルグループ(本社・山口県下関市)を構成しています。

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正面中央に設けられた玄関、3列の窓を挟んで立つ4本の柱型、横目地を入れた人造石洗い出しの外壁(現在は吹き付け仕上げ)などなど…様式の名残を色濃く感じさせる外観です。不定型な敷地から右側が鈍角に大きく開いているため、箱型のものに比べると堅実さに欠ける反面、繊細な窓格子の存在も相まって、ちょっとした優雅さすら漂わせています。戦後の銀行建築の中では、個人的にかなり好きな建物です。

この後は再びバスで若戸大橋を渡り、戸畑へと移動します。 (後編に続く)


【撮影年月】
特記なき限り、2015年12月下旬

【参考文献】
『清水建設株式会社 九州支店50年』 清水建設九州支店50年編集委員会/清水建設九州支店/1956年
『10周年記念作品集』 日建設計工務株式会社/同左/1962年
『福岡銀行二十年史付編』 福岡銀行/1970年
『励:その足跡 徳永庸追想録』 母里嘉久/徳永安喜/1977年
『富士銀行の百年』 富士銀行調査部百年史編さん室/同左/1980年
『佐賀銀行百年史』 佐賀銀行/同左/1982年
『横浜正金銀行全史』第6巻 東京銀行/同左/1984年
『信用金庫40年史』 全国信用金庫協会/1992年
『大分銀行百年史』 大分銀行百年史編集委員会/大分銀行/1994年
『東京銀行史』、同資料編 東銀史編纂室/東銀リサーチインターナショナル/1997年
『住友銀行百年史』 住友銀行行史編纂委員会/住友銀行/1998年
『山口銀行史』、同資料編 銀行史編纂委員会/山口銀行/1999年
『北九州の近代化遺産』 北九州地域史研究会/弦書房/2006年

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