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中津市の近代建築(後編)  

前回に続き、大分県中津市の古い建物をご紹介します。

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中津市中心部の洋館(その2)
中津市中心部/明治~昭和戦前/木造2階建

アパート秀峰苑の近くにある瓦葺きの洋館。現状はかなり手を加えられているものの、手前の門塀も含めて左右対称の構成をとっており、もとは端正な佇まいであったことが想像されます。

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1階は玄関と引き違い式の窓が1対、2階には上げ下げ式の縦長窓が4つ並び、いずれも木製の建具が残っています。建築時期は腰壁のスクラッチタイルから昭和初期かと思いますが、実際にはもっと古いかもしれません。

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中津カトリック教会 聖堂
中津市1238-1(三ノ丁)/1938年/木造平屋建

中津城の近くにある教会建築。現在の聖堂は1938(昭和13)年に建てられ、正面中央と両脇に尖塔を配し、開口部には半円アーチを使用しています。

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後年の改装と思われる可愛らしい彩色が目を引く一方、このモザイクタイル貼りの階段も中々印象深いものがありますね。

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中津カトリック教会 司祭館
中津市1238-1(三ノ丁)/1946年/木造2階建

右隣にある司祭館の建物。簡素ながら正面中央に配された玄関ポーチなど、随所に時代を感じる造りが見られます。こちらのサイトによると1946(昭和21)年に米軍の支援で建てられたとのこと。

Laudate > 教会 > 教会をたずねて > カトリック中津教会

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ちなみに中津におけるキリスト教の歴史は16世紀末、当時キリシタン大名だった黒田官兵衛孝高の入封に始まります。黒田氏に代わって入った細川忠興の妻・ガラシャ夫人もキリシタンとして有名な人物。また、日本文理大学(大分市)で移築保存されている明治期の宣教師館「キャラハン邸」は、もともとはここ中津にあった建物だそうです。こうして見ると、中津はキリスト教とかなり縁深い土地に思えます。

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錬心館 (旧 中津武徳殿)
中津市1285-1(三ノ丁)/1941年/木造平屋建

カトリック教会の左隣。1941(昭和16)年に建てられた、市所有の武道場です。

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入母屋屋根に庇を重ねた威厳ある外観で、木製の建具もよく残っており、竣工時の雰囲気を今に伝えています。

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中津市中心部の洋館(その3)
中津市中心部/1920年代?/木造2階建

同じ並びにある赤い洋館。かなり大ぶりな住宅ですが、過去には法律事務所として使われた時期もあるようです。

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何度か増築されているのか、建物の形としては少々雑然としているものの、窓回りや軒には装飾も見られます。これらの装飾は大正後期から昭和の一桁、1920年代の雰囲気だと思うのですが、実際の竣工時期はどうでしょう。

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汐湯
中津市1278-1(三ノ丁)/木造

山国川のほとりにある銭湯。屋号は川の水(河口付近なので海水が混ざる)を汲み上げて沸かしていることから付けられたそうです。1882(明治15)年に割烹料亭として創業し、1896(同29)年から銭湯の兼営を始めたとのこと。

汐湯(中津市HP)

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2階建ての銭湯は昭和30年代、3階建ての割烹は大正時代の建築。たまたま定休日(4のつく日)に当たってしまい内部は未見ですが、ネット上の各所でレポートを拝見した限り、どうやらここは天国のようです。いつかは心ゆくまでどっぷりと浸かった後、ビール片手に涼むなりコタツで転がるなりしたいなあ…。

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中津市中心部の洋館付き住宅(その6)
中津市中心部/昭和初期/木造2階建

こじんまりとした洋館付き住宅。立派な庭木に遮られていますが、正面1階左手にパラペットを立ち上げた洋館が附属しています。

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パラペットは不思議な模様つき。敷地手前の門塀(煉瓦造?)も人造石洗い出しと玉石で飾られ、また主屋でも破風板に銅板を張るなど、小規模ながら丁寧な造りが見られます。

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旧 旅宿伸栄
中津市1453(京町)/明治期竣工/木造3階建

道幅の狭い通りに面してそびえる木造3階建ての建物。2010年に廃業した老舗旅館「伸栄」(かつては「西津田屋」「竹内旅館」とも)で、近年は地元有志により交流スペースとして活用されているそうです。

風情ある旧旅館を交流の場に 中津市京町(大分合同新聞)

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3階は後年の増築のように思えますが、いずれにせよ近代の香りと風格を感じさせる立派な建物です。これまた訪問時は運悪く開いていなかったので、内部についてはこちらのブログ記事をご参照ください。

九州~列車で行こう~下町親父の珍道中 > 旧旅館 伸栄(その1) ~大分県中津市の歴史的建造物

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奥永薬局
中津市1451(京町)/昭和初期/木造平屋建(一部2階建?)

旧旅館に程近い場所にある薬局。いわゆる看板建築ですが、「看板」となる洋風部分には少々厚みがあり、ここだけ2階があるように見えます。

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外壁は茶色~黄土色系の落ち着いた色合い。軒回りには卵鏃模様(エッグアンドダーツ)を簡略化したような装飾が巡らされています。

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中津市中心部の洋館付き住宅(その7)
中津市中心部/大正以降/木造2階建

かなり奥まった位置にある住宅。形だけを見れば、正面左手に陸屋根風の洋館を備えた洋館付き住宅なのですが…外壁全面が銅板張りという見慣れない仕様となっています。確かにこれは、竣工時期に今ふたつほど自信が持てません。

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中津市中心部の建物 (旧 医院)
中津市中心部/大正後期~昭和初期/木造2階建

県道108号沿いにある建物。現在は向かって右端が削られていますが、もとは玄関を軸に両翼部を張り出した左右対称の建物で、昔の地図によると産婦人科と耳鼻咽喉科の2つの医院が入居していたようです。

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木造瓦葺きながら前面にはパラペットを巡らせ、外壁もモルタル仕上げ(人造石洗い出し)としたビル風の外観です。現在見られるものに加え、当初は窓回りにも何らかの装飾が施されていたようで、かなり気合の入った建物であったことが窺えます。

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中津市歴史民俗資料館 (旧 小幡記念図書館)
中津市1385(殿町)/1938年/木造2階建など
設計施工:清水組 ※国登録有形文化財

同じく県道沿い。小幡図書館(※)の2代目の建物として、清水組の設計施工により1938(昭和13)年に建てられました。1階前面を張り出して左手に玄関、右手に5連アーチ窓を、また両側面(妻側)には丸窓や装飾を配しています。

※旧中津藩士の思想家・教育家、小幡篤次郎(おばた とくじろう)が生家の土地家屋と蔵書を寄贈し、1909(明治42)年に中津図書館として開館。戦後に中津市へ移管され、中津市立小幡記念図書館となる。1993(平成5)年、現在地へ新築移転した

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裏側にはRC造3階建ての書庫が付属。図書館の移転後は市の歴史民俗資料館として活用されており、また本館の建物は国登録有形文化財となっています。

中津市歴史民俗資料館(中津市HP)

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日本基督教団 中津教会
中津市1387(殿町)/昭和20年代?/木造平屋建

資料館と道路を挟んで西隣にある教会。公式(?)ブログの記事によると、先述したキャラハン師によって創立されているようです。現在の礼拝堂は少々増改築が目立ちますが、銅板葺きの尖塔や水色の縦長窓が見られる平屋建ての部分が原型で、恐らく戦後間もない頃の竣工と思われます。

日本基督教団中津教会 > 中津教会の創立

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辛島耳鼻咽喉科医院
中津市1421(殿町)/昭和初期?/木造2階建

これまた県道沿い。かつては古い医院建築がいくつも並んでいたようですが、医院として現役で残っているのはここだけのようです。外壁は目地を切った人造石洗い出し仕上げ(背面のみ羽目板張り)で、正面には小さな縦長窓が並び、木造ながら中々重厚な印象を受けます。

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玄関は中央やや右にずらして設けられ、斜めのアプローチの先に瀟洒なポーチが迎えます。建具以外は当初の外観をよく留めており、保存状態も含めて中津市を代表する洋館だといえるでしょう。

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花柳里紗香会 舞踊道場
中津市1814(諸町)/昭和10年代?/木造平屋建

県道から一本入って突き当りにある小さな建物。勾配の緩やかな切妻妻入り瓦葺き、正面には凸型のパラペットを立ち上げますが、外壁はペンキ塗りの下見板張り。板張りのパラペットというのはあまり見ない気がします。

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中津市中心部の建物 (旧事務所?)
中津市中心部/昭和期?/木造2階建

日豊本線の高架を潜って南側。昼前に中津駅へ降り立つ直前、車窓から一瞬見えた姿が気になったので訪れたのですが…確かに「古そう」ではあるものの、道路からは正面の一部しか窺えないので、それ以上はよく分からないのが正直なところ。

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縦長窓はよくよく見ると出窓になっています。その他の要素は(見える範囲では)至って普通なだけに、どこか引っかかります。

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中津市中心部の洋館付き住宅(その8)
中津市中心部/昭和初期/木造2階建

規模の大きな洋館付き住宅。鉱滓煉瓦造の塀に太い門柱、鋼製の門扉というがっしりとした門構えも印象的です。

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洋館外壁は腰回りのみタイル張り、他は黄土色のモルタル仕上げ。1階南側が台形に張り出し、上部はバルコニーとなっています。窓はいずれも縦長で、ごく僅かに突き出した庇付き。1階のみ木製の窓枠が見られます。

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丸山町の建物
中津市丸山町/1950年代?/木造2階建

県道113号沿いにある青色スペイン瓦葺き、白色モルタル外壁の建物。正面右側の壁面を後退させ、階段(コンクリート製?)を設けて2階に玄関を配するなど、少々風変りな造りをしています。

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最大の特徴は正面2階にある窓。大きなサイズのガラスが高価な時代だったために、こうなったのかもしれませんが…固定式と可動式の組合せによるパターン、左側だけ段違いとなったデザイン、とにかく素晴らしいの一言です。モダン具合が植田産婦人科医院(佐賀市、写真)に似ていることもあり、どことなく医院建築のように思えますが、当初の用途は不明。

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上宮永の住宅
中津市上宮永/明治~昭和戦前/木造平屋建

旧城下町から南下し、少し農村のような雰囲気が出てきた辺り。水路に沿って石垣+塀が続く立派なお屋敷です。

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白壁が目に付く和風の住宅ですが、隅石(コーナーストーン)を模した意匠や欠円アーチ窓など、擬洋風建築かと思わせる特徴が見て取れます。もっとも、ここでも塀と庭木に遮られて全容は窺えませんでした。

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久恒家住宅
中津市上宮永3-1/1924年/木造平屋建など ※国登録有形文化財

県道110号沿いにある邸宅。炭鉱に詳しい方なら「久恒」と聞いてピンと来るかもしれません。漆生炭鉱(福岡県嘉穂郡)や志岐炭鉱(熊本県天草郡)など、北部九州各地で炭鉱を経営した久恒鉱業の創業者・久恒貞雄が1924(大正13)年に建てたもので、いわゆる炭鉱主住宅の現存例です。

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鉱滓煉瓦塀に囲まれた広大な敷地に、住居をはじめ複数の建物が並んでいます。文化遺産オンラインで検索してみると、門や塀、蔵も含めて計15件が国の有形文化財に登録されているようです。

大分県 久恒家住宅の検索結果(文化遺産オンライン)

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中津市役所庁舎分室
中津市島田706-1/明治~昭和戦前/木造2階建

久恒家住宅で折り返し、駅の南口へと戻ります。その途中にある中津市役所庁舎分室の建物。

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黒漆喰塗りの重厚な主屋に一部煉瓦造の立派な蔵という、かつての商家を転用したものと思しき佇まいですが、建物の由来についての案内が一切なく詳細は不明です。ちなみに蔵の入口に貼ってあるのはゴミ出しの案内でした。

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中津市中心部の建物 (旧飲食店?)
中津市中心部(上博多町)/昭和20年代?/木造2階建

直線的なデザインのファサードが格好良い建物。恐らく戦後間もない頃の竣工と思いますが、形としては看板建築と同じなので、本体はもっと古いかもしれません。

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何となく飲食店だったような雰囲気。特に根拠らしい根拠はなく、当てずっぽうです。

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ビューティーサロン ボン
中津市1975(上博多町)/昭和30年代?/木造2階建

レトロな美容室。切妻妻入りで奥行きがあり、竣工時期は前出物件よりやや下ると思います。

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2件の並び。

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オリーブ美容室
中津市1968(上博多町)/昭和20年代?/木造2階建

最後に、これまた同じ通り沿いにある美容室。基本的な造りは写真左の町屋と同じ切妻平入りで、やはり戦後生まれの看板建築かもしれません。

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現在はベージュ一色に塗装されていますが、1階にはサイズの異なる2種類のモザイクタイルが見られます。


⇒大きな地図で見る ※個人住宅はマップに反映させていません

【参考サイト】
地域文化博物館・高炉館 > 産業考古学研究室 > 近代化産業遺産総合リスト > 大分県中津市(中津地区)編
都市風景への旅 > 近代建築 > 九州 > 大分県中津市No.1 , 大分県中津市No.2
西日本 近代建築万華鏡 > 中津市
日常旅行日記 > 中津の洋風建築など(大分県中津市)
前村記念博物館 > 日本近代建築館 > 日本近代建築館・中津



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その後は駅でレンタサイクルを返却し、途中下車を経て宿泊地の別府へ向かいました。中津市内では6時間以上せかせかと動き回りましたが、まだまだ多くの古い建物が残っている気がする一方で、中津城をはじめとする名所をすべてスルーしてしまったのは少々惜しかった気も。次に観光で訪れる際には、城や汐湯をメインに据えてのんびりとした行程を組もうと思います。

以上、中津市の近代建築でした。

(撮影年月・2015年9月)

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