2016/10/15 (Sat) 09:00

焼失した小国町の木造商店建築3件



またしても悲しいニュースですが…今月10日(月・祝)の早朝、熊本県阿蘇郡小国町の大字宮原で火事がありました。幸いにして人的被害は軽微だったものの、木造の店舗や住宅など約20棟が全半焼したとのことです。

 10日午前5時前、熊本県小国町宮原の住宅密集地から出火、住宅や店舗、介護施設など19軒を全焼し、5軒を半焼して約5時間後に消えた。焼損面積は約4千平方メートル。小国署によると、約30人が焼け出されたが、けが人はいなかった。現場は町役場から筑後川を挟んで南西へ約130メートルの古い家屋が並ぶ町中心部。同署と消防は11日午前、焼け跡で実況見分を始め、火元や出火原因を調べている。
 阿蘇広域消防本部によると、午前4時56分に住民から119番があった。地元消防団も含めポンプ車など35台が出動し、消火に当たった。小国署によると、全焼したのは住宅11軒、店舗3軒、空き家3軒、歯科医院と介護施設が各1軒。半焼は住宅4軒、店舗1軒。他に部分焼も2軒あった。家屋の多くは木造で長屋形式の建物もあり、火の回りが早かったとみられる。
 現場近くには、かつて多くの芸能人が舞台に立った映画館兼用施設の建物が残り、高齢化の影響で空き家も点在していた。(後略)

※西日本新聞 2016年10月11日(火)夕刊掲載記事(西日本新聞 > ニュース > 社会 > 小国中心街24軒全半焼 住宅や店舗、未明に出火 けが人なし)より引用

私が小国町を訪れたのは今年4月上旬のこと。火災に遭った一帯には古い街並みがよく残っており、近隣の建物と併せていずれ紹介できれば、と考えていました。当記事では残念ながら火災で焼失してしまった建物のうち、特徴ある3件の木造商店建築について、在りし日の姿をご紹介します。ただし本題へ入る前に、まずは被災状況の確認を。

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※グーグルマップより引用・加工。画像クリックで当該ページへ移動

火災現場は町役場から南へ徒歩5分、道の駅兼バスターミナル「ゆうステーション」(旧国鉄宮原線・肥後小国駅跡地)から南東へ徒歩10分ほどの距離にあり、かつては多くの商店が軒を連ねた同町中心部のメインストリートです。今回紹介する木造商店建築3件(仮にA・B・C棟とする)はこの通り沿いで、いずれも旧・雄国会館への出入口付近に立地。ちなみに雄国会館とは、引用した新聞記事中にある“映画館兼用施設” のことです。

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※NHKのニュース映像NHK NEWS WEB > 社会ニュース一覧 > 住宅や店舗など20棟焼ける 熊本 小国町より引用・加工

NHKニュースの空撮映像のキャプチャ。旧・雄国会館は被害を免れたようですが、通り沿いは広い範囲にわたって焼失しています。念のため朝日新聞のサイトに掲載された同一アングルの写真を見ても、やはりA~C棟はほぼ全焼しているようです。

密集地で火災、約20棟が全焼か 熊本・小国朝日新聞デジタル

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それでは、改めて今年4月に訪れた際の写真を見ていきます。突き当りは旧・雄国会館。

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同一地点より振り返る。


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A棟

通りの南側に建つ木造2階建て、切妻造平入りの建物。訪問当時はITサポートセンターの事務所が入居していました。

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正面中央に立ち上がる切妻破風が目を引きますが、よく見ると軒が大きく迫り出しており、さらに軒天から外壁面にかけてはアールに仕上げるという、特徴的な外観となっています。

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外壁は淡いピンク色の下見板張り。1階が大幅に改造され、2階も横いっぱいに窓が取られているものの、もともとは「板張りの洋館」といった雰囲気だったのではないでしょうか。

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軒下から見上げる。建物の前には九州産交バス(本社・熊本市西区)の「小国中央」バス停があり、町内や隣接する南小国町、さらには阿蘇市のJR豊肥本線・阿蘇駅までを結ぶ路線も発着します。ちなみに以前は大分交通グループの玖珠観光バス(本社・大分市)のバス停も存在し、旧国鉄宮原線の代替として小国町と大分県玖珠町のJR久大本線・豊後森駅とを結んでいました(2013年3月末廃止)。

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通りの西側より。


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B棟 

A棟の斜め向かいに建っており、規模・構造、そして改造の度合いもほぼ同じです。

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異なるのは中央頂部の破風。半切妻造であるうえ、ドーマーのように軒よりも上側に乗っかっています。

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こちらにもバス停(標識はA棟側のみ)。

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訪問時は住宅のようでしたが、戸口の広さから、恐らくかつては何らかの店舗だったと思われます。

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C棟

A棟の真向かい、B棟の右隣。眼鏡・時計店と食堂が入っていたことが看板から見て取れます。

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B棟とは密接していますが、棟続きにはなっていないようです。

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というのも、屋根の形状からして全く異なっており、この棟では何故かマンサード屋根(二段勾配の寄棟造)が採用されています。

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さらに側面は2階の全面を窓とした開放的な造り。

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それでいて正面外壁の仕様と特徴的な軒の迫り出しは、やはりA・B棟と共通します。

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このように、どこかちぐはぐな印象を受ける3棟の建物ですが、その違和感は建物の成り立ちに起因しているのかもしれません。

以下は想像ですが、これら3棟が狭い道路を挟んで向かい合っていること、そして建物の前にバス停があることを踏まえると…バス路線の運行開始、あるいは使用車両の大型化によって道路を拡幅する必要が生じた。そこでバス停に面した既存の建物を改修するにあたり、屋根には手を付けずに外壁面だけを後退させた結果、このように軒が大きく迫り出した姿になったのではないでしょうか。

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先に少し触れたように、小国町にはかつて国鉄宮原線が通っていましたが、これは福岡・大分県を走る久大本線の支線。マイカーが普及する以前、路線バスが山深い小国町と熊本県内の都市を結ぶ重要な存在であったことを考慮すると、バス停のためにわざわざそのような手段をとったとしても不思議ではない気がします。これら3棟以外には似たような建物が見られない点も、特異な外観とバス停との関係性を補強しうるポイントの一つですね。

仮に想像通りだったとしたならば、改築前の外観がとても気になるところですが…いずれも焼失してしまった今となっては、何とも言い難いものがあります。そもそも、火災のニュースにかこつけて手前の想像を披露するというのも不届きに思われるかもしれませんが、「こうした記事もひょっとしたら何かの記録になるのでは」と考えて書き置いた次第ですので、どうかご容赦ください。

(撮影年月・2016年4月)

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2016年小国町大規模火災その後(跡地の画像・動画)

2016年に発生した小国の大規模火災。その後の町並みを撮影してきました。