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2017/04/29 (Sat) 09:00

坑外施設(3)輸送

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今回は麻生山田炭鉱の坑外における生産工程のうち、輸送に関わる施設の遺構を紹介します。

この工程では、選別・貯蔵された精炭を架空索道*13 によって、南西へ約5キロ離れた国鉄土井駅付近の積込場まで運び、鉄道の貨車に積み替えていました。鉱山における索道輸送は山間部などで古くから見られるものの、同鉱のようにそれほど山深くない地域で、しかも原炭やボタではなく精炭を輸送した例は少々珍しいのではないかと思います。

ちなみに久山町には鉄道路線が通っておらず*14 、同町久原の明治高田炭鉱久原坑(1924年買収・開坑)では石炭運搬のため、約2キロ南にある同郡篠栗町の国鉄篠栗駅付近まで軌道を敷いていました。麻生山田炭鉱ではこうした立地に加え、ひょっとしたら戦後の農地改革なども影響して、専用鉄道・軌道ではなく索道が採用されたのかもしれません。

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やはり閉山後に設備の大半は撤去されましたが、ロープを張り渡すための鋼製の支柱が1本だけ現存しているほか、起点にあたる選炭場には鉄筋コンクリート造の遺構が見られ、同鉱の特徴的な輸送形態を辛うじて今に伝えています。


【11】架空索道(送炭ケーブル)(画面右下のボタンをクリックすると新規タブ/ウィンドウで閲覧できます)



【脚注】
*13 空中に張ったワイヤーロープに搬器(ゴンドラやバケットなど)を吊るし、ロープの循環や往復によって旅客または貨物を輸送する設備。空中を移動することから起伏の激しい地形に強く、また鉄道や道路に比べて建設・撤去も容易である。旅客ではロープウェイやリフトの例があり、貨物では鉱業・林業・建設業の資材運搬などに現在も用いられる。
*14 山陽新幹線(1975年全線開業)が町内を通過するが、駅は存在しない。

【参考文献・リンク】
「松岩面積比15%以上介在する高田層本組炭層の採炭合理化の変遷について」麻生山田炭鉱採鉱課
 ※『九州炭砿技術連盟会誌』1967年6月号(九州炭砿技術連盟)pp. 2-6
『麻生百年史』麻生百年史編纂委員会/麻生セメント/1975年
『ひさやま・20年のあゆみ:写真集』久山町役場総務課/久山町/1976年
『久山町誌』上巻 久山町誌編纂委員会/久山町/1996年
『福岡の近代化遺産』九州産業考古学会/弦書房/2008年
あれなん > 麻生山田炭鉱 索道支柱基礎遺構?かも

【撮影年月】
 2013年3月、2014年2月、3月、2015年1月、2017年2月

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