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坑外施設(4)その他  

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今回は麻生山田炭鉱の坑外における主要施設のうち、石炭の生産工程(搬出・選別・輸送)からは少し外れるものの、操業に大きな役割を果たした施設の遺構を紹介します。


【12】火薬庫 (画面右下のボタンをクリックすると新規タブ/ウィンドウで閲覧できます。以下同じ)

かつての火薬庫らしき施設の遺構。大小2つの倉庫があり、いずれも周りを土堤で囲むなど、火薬類取締法施行規則 第24条(地上式一級火薬庫の位置、構造および設備)に準じた設計となっています。また周囲には詰所だったと思われるプレハブ小屋や、巻上機(第1編02参照)方面へと続く道路の跡も残っています。

火薬庫自体は坑外に位置しますが、実質的には坑内の生産工程にかかわる施設です。同鉱では採掘時の発破はもちろん、一時期は松岩の処理にも爆薬が多用されていました。松岩に悩まされた同鉱の歴史を今に伝える、希少な遺構と言っていいでしょう。


【13】第一坑人車卸 スロープ・排気坑口?

第一坑新卸(第1編01参照)と対をなす施設が人車卸です。炭鉱の斜坑は通常2つで一組となっており、同鉱では新卸が石炭搬出と入気を、そして人車卸が人員昇降と排気をそれぞれ担っていました*15 。人車卸の坑口はほぼ跡形もありませんが、松岩の石垣に挟まれたスロープや、人車の乗降場の跡と思しき遺構が見られます。

また、新卸坑口寄りの少し離れた場所には、地上部分を解体のうえ閉塞された坑口の跡が残っています。参考文献No.2によると同鉱の通気方法は中央式*16 で、人車卸に主扇*17 を設置していたとのこと。このため人車卸から分岐していた排気坑口と推測しますが、確証は得られていません。


【14】変電所

人車卸スロープ付近に残る鉄筋コンクリート造(薄肉ラーメン構造?)の建屋。室内にチョークで “MΩ” “Vメガー” などと書かれていること、周辺に碍管*18 が見られることなどから、かつての変電施設の跡と考えていいでしょう。また現在は倒壊していますが、当初は木造の建屋と一続きになっていたようで、側面の一方に部材が散乱しています。


【15】用水設備ほか

貯水槽や沈殿槽などの設備の遺構。近隣にある池から取水していたと思われ、山裾の広範囲に遺構が散在しています。

ちなみに付近には、小規模な巻上機の台座らしき遺構も見られます。ここから約500メートル北西にあった第一坑右卸坑口まで、資材などを運搬する索道があったのではないかと想像しますが、詳細は不明です。


【16】ボタ山・選炭ボタポケット

炭鉱の選別工程(第2編冒頭参照)で生じる不純物や粗悪炭などの捨石(ボタ)は、長年にわたって廃棄されるうちに円錐形に積み上がり、「ボタ山」と呼ばれる人工の山を形成します。同鉱は炭層に松岩が多く含まれ、坑内での採掘時点から多量のボタが生じていたため、坑口と選炭場付近の計2か所にボタ山がありました。

“このボタ山は、…(中略)…、大字山田字石切の山腹及び谷間に堆積散布されたピラミッド状の山で、その規模は、ボタ山の面積5万6700平方メートル、ボタ推定量90万立方メートル、ボタ山の高さ約78メートル、標高151メートルで、昭和62年2月23日、麻生セメント(株)より取得したものである”

(『久山町誌』上巻789頁より引用)

1980年代から一部で地滑り現象が発生し、近隣を通る山陽新幹線(閉山後の75年開業)や農地への影響が懸念されたため、90年代前半にかけて町による整地工事が行われました。このためボタ山の面影はあまり感じられませんが、選炭場の一角にはボタを貯蔵していたRC造のポケットが、土砂に埋もれながらも辛うじて残っています。ちなみに坑内で生じたボタのポケットについても、原炭ポケット(第1編04参照)の項目に既述の通り、現存するものと思われます。

以上、全4編にわたって同鉱の坑外施設の遺構を紹介しました。一連の生産工程を断続的ながら辿ることができる上、社宅などの生活施設まで現存する炭鉱跡地というのは、今となってはあまり見られないものと思われます。国内の石炭産業や、地域の歴史を物語る貴重な遺産として、これらの遺構が今後も残り続けることを強く願っています。


【脚注】
*15 1948年の開坑当初は本卸・連卸が、1958年から61年までは右卸・右連卸が、同様の役割をそれぞれ担った。
*16 入気坑口と排気坑口を近接して配置する方式。坑外施設を1か所にまとめられる利点があるが、通気距離が長くなり通気抵抗が増大するなどの欠点も少なくない。このため炭鉱の合理化が進むにつれ、両坑口を離して配置する方式(対偶式)が主流となった。
*17 主要扇風機(または主要送風機)のこと。坑内ガスを効率的に排出するため、通常は排気坑口側に設置される。同鉱ではシロッコファン(出力22kW)が使用され、総排気量は毎分1,050~1,100立米であった。
*18 筒状の碍子。建物の壁などに電線を通す際、絶縁・支持のために用いられる。

【参考文献・リンク】
1.「麻生産業における重液選炭に就いて」松尾敏美
 ※『九州炭砿技術連盟会誌』1955年12月号(九州炭砿技術連盟)pp. 8-16
2.「松岩面積比15%以上介在する高田層本組炭層の採炭合理化の変遷について」麻生山田炭鉱採鉱課
 ※『九州炭砿技術連盟会誌』1967年6月号(九州炭砿技術連盟)pp. 2-6
3.「鉱山換気用送風機について」飛田二雄、梅田健夫
 ※『ターボ機械』1980年6月号(J-STAGE
4.『久山町誌』上巻 久山町誌編纂委員会/久山町/1996年
e-Gov > 法令データ提供システム > 火薬類取締法同法施行規則
石灰石鉱業協会 > 保安管理マスター制度 > 鉱山保安テキスト > 第2編 坑内 第2章 通気(PDF)

【撮影年月】
 2014年2月、3月、12月、2015年1月、2月、2017年2月

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