JA福岡県会館

JA福岡県会館(福岡県農協会館)
福岡市中央区天神4丁目10-12/1960年/鉄筋コンクリート造+鉄骨造、地下1階・地上5階建
設計監理:石本建築事務所 施工:竹中工務店
今回はJA福岡県会館をご紹介します。県農業協同組合中央会(JA福岡中央会)や県信用農業協同組合連合会(JA福岡信連)、県農協健康保険組合(JA福岡健保)、全国共済農業協同組合連合会 福岡県本部(JA共済連福岡)などが入居する、JAグループ福岡の拠点施設です。1960(昭和35)年2月に着工し、同年12月に竣工しました。
設計は石本建築事務所。石本喜久治氏が設立した東京の大手設計事務所で、福岡市内では戦前に福岡銀行集会所(1936年竣工)、博多株式取引所(同年)、三井銀行福岡支店(38年)、また戦後の同時期には福岡市農協ビル(68年)などを手掛けています。
※Google Earthより
須崎公園前の丁字路角に立地し、建物正面(西側)は県道554号、背面は那珂川に面しています。建物はシンプルな箱型で、一見平凡な事務所ビルのようですが、屋上に少々珍しい形の屋根が載っているのが特徴です。「会館」の名称からも想像されるように、恐らく最上階に何らかの集会スペース(講堂?)が備わっており、JAグループの各種会合に利用されるのでしょう。
正面外観。水平性を基調としたデザインで、腰壁タイルの白色と窓ガラスの青色の組み合わせが爽やかです。一方、1階では柱梁を表して御影石で仕上げており、どっしりとした安定感も感じられます。
1階の大部分はJA福岡信連の本所で、玄関は正面右端に位置しています。
見上げる。窓はオリジナルではなく、当初は一枚窓と二段窓の列が3対2の割合で配置されていたようです。
正面左隅にひっそりと「定礎 1960」。
須崎橋(県道602号)より背面。こちらは各階とも柱を露出させ、バルコニーと外階段を巡らせています。
対岸より背面全景。隣接する信連別館(2002年竣工)に隠れていますが、塔屋南側に「JA福岡県会館」の看板が。
集会スペースの屋根の詳細。全体的には緩やかなヴォールト(かまぼこ型)ながら、両側が波状にうねっており、どことなくシャコガイのような二枚貝の貝殻を思わせます。あまり見かけない形状ですが、これもRCシェルの一種なんでしょうか。
壁面は茶色のタイル張りで、下部には控え壁?が突き出しています。
JA福岡中央会の三十年史(1990年)によると、当時既に老朽化から新会館建設が検討されていたそうですが、改修と別館建設という形で落ち着いたのか、結局は今日まで在り続けています。ざっと調べた限り、同種の施設(県レベルの農協会館)では全国でも古い部類に入るようです。それが良いかどうかは別としても、個人的には屋根のウネウネが気に入っているので、今後とも元気でいてくれたらと思います。
以上、JA福岡県会館でした。
▲JA福岡市本店(福岡市農業協同組合本店/1968年竣工/2005年改修/RC-1+4/設計石本建築事務所/施工守谷組)
おまけ。同じく石本建築事務所の設計で建てられた福岡市農協ビルですが、大規模な改修を経て現存しています。ちなみに場所は県農協会館の真向かい。この辺りは天神のやや外れに当たり、「こんな所にJAの拠点が2つも?」と思ってしまいますが、もともと県道602号に西鉄福岡市内線・循環線(79年廃止)が走っており、すぐ近くに電停もあったそうなので、当時は便利な立地だったのでしょうね。
【撮影年月】
2013年7月、2015年5月、2016年12月
【参考文献】
『福岡県農業協同組合史』福岡県農業協同組合史刊行会/同/1966年
『協同を問う:福岡県農協中央会三十年史』福岡県農業協同組合中央会/同/1990年
コメント