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NTT大分支店別館  


NTT西日本 大分支店別館(旧 逓信省大分郵便局電話分室)
大分市府内町3丁目4-34/1927年/鉄筋コンクリート造2階建
設計:逓信省経理局営繕課(上浪朗?) 施工:清水組

引き続き逓信建築シリーズ。今回はNTT西日本 大分支店別館をご紹介します。1927(昭和2)年6月に大分郵便局の電話分室として竣工したもので、前回までに取り上げた門司鹿児島の両局舎と同じく、共電式という電話交換方式の導入に伴って建てられました。

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共電式の概要については、いつものように『九州の電信電話百年史』の解説を引用します。同方式は局舎内に大容量の電源設備を収容する必要があったため、導入の際に局舎の建て替えや新築移転を伴うケースが多かったようです。

電話交換の初期の方式は磁石式で、加入者電話機には個別に送話用の電池や信号発電機などが備えられるため、その費用が高く、また多数の宅内に分散しているため保守に多くの人手を要し、不経済であった。これらの不利を除くため、改良されたものが共電式で、加入者電話機には送話機・受話器・電鈴など通話と信号に必要な機器だけとし、送話電池や信号用電源は各加入者が共用する大容量のものを交換局内に設備した。これにより、取扱いの簡便、通話の明りょう、安定、取扱能率の向上、回線収容能力の増加など、磁石式に比べて画期的な改良がなされた。

※『九州の電信電話百年史』243・244頁より引用

大分郵便局は市中心部の電車通り沿いにあり、1919年に竣工した木造2階建ての局舎でした。この局舎内で郵便・電信とともに電話業務を取り扱っていましたが、共電式の導入に伴い、25年8月に電話分室の建設用地を取得。26年4月に清水組の施工により着工、翌27年6月に先述の通り竣工し、そして同年8月、福岡・門司・鹿児島・長崎に続く九州5番目の共電改式が実現しました。

<沿革>
1909 (M42) 02.16 大分郵便局 電話通話事務開始
1909 (M42) 03.01 電話交換業務開始
1927 (S02) 06.15 電話分室局舎新築(荷揚町89、大分市誌では同月26日竣工)
1927 (S02) 08.21 共電改式
1935 (S10) 04.15 電話課を設置
1947 (S22) 12.11 大分電話局 開局
1957 (S32) 12.18 局舎新築(荷揚町119)
1958 (S33) 06.01 自動改式
19 -- (S--) -- . --  同局と大分電報局が合併し、大分電報電話局が発足?
1989 (H01) 04.01 NTT大分支店に改称
※前掲書「機関別沿革」、『大分市誌』等より抜粋・作成

施設の主な沿革は以上の通り。戦前に電話課、戦後に電話局へそれぞれ昇格した後、電電公社時代に隣接して新局舎が建てられました。それ以後の詳細は不明ですが、現在もNTT大分支店の別館として使用されており、関連企業が数社入居しています。

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設計が逓信省営繕課によることは恐らく間違いないでしょう。さらにこちらの論文では、営繕技師の上浪朗(うえなみ あきら)の “設計作品とされているもの” の一つに、“大分郵便局電話事務室” が挙げられています。

J-STAGE > 建築家上浪朗の逓信局舎建築作品に関する考察 : 広島郵便局電話分室と広島逓信局庁舎建築を中心として

当該箇所の出典には目を通せていませんが、論文中では大分と酷似する広島・尼崎の電話分室が取り上げられており、またそれらは上浪の設計である可能性が高いことが指摘されています。よって断定はできませんが、この建物も同氏の設計作品である可能性が高いと言えそうです。

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それでは外観を見ていきましょう。門司・鹿児島の局舎と同じく、角地に建つL字型平面の建物です。ただしコーナーは直角となっており、箱型に近くシンプルな印象を受けます。

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正面エントランス(東側)。中央やや左手に位置し、楕円形のアーチがアクセントとなっています。開口の内部には石段、門扉、玄関がありますが、いずれも改修済みのようでした。

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左側面(南側)。これらのファサードに柱型・方立による列柱を巡らせ、その両脇に段状の意匠を施すことで、垂直性を強調しています。こうした列柱のデザインや使用手法は鹿児島(の原型)とほぼ同じですが、一つだけ大きく異なる点があります。列柱の頂部が何かを支える訳でもなく、ぷっつりと途切れてしまっているのです。

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▲旧 下関電信局電話課庁舎(山口県下関市/1924年/RC3/設計逓信省営繕課)

参考までに、大分より3年ほど早く建てられた旧 下関電信局電話課(写真)。こちらは古代ギリシャ風の円柱ですが、大げさに出張っている割には支えるべきエンタブラチュア等が見当たらず、やはり外壁に取って付けたような様相を呈しています。さらに遡って1922年、逓信省技師・岩元禄の設計により竣工した東京の青山電話局(現存せず)では、もともと柱頭部に裸体のトルソーを載せるはずが、設計変更となって実現しなかったとのこと。この時に偶然生まれた “取って付けたような” 柱は、一種のデザインとして他の技師へと受け継がれたようで、以降も下関を含む複数の逓信建築で採用されています。

分離派建築博物館 > 青山電話局
昭和毎日 > 青山電話局

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改めて大分のそれを見ると、円柱ではなく角柱なうえ張り出し方も控えめで、一見すると似ても似つかぬ印象です。しかし先述した頂部の処理に加え、両脇に施された意匠を考慮すると、従来用いられていた縦溝彫り付きの円柱を簡略化し、平面的に表現したものと解釈できます。従って時代は少々下りますが、この建物も青山・下関などの流れを汲む存在に位置付けられなくもないでしょう。

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西側。敷地奥には一回り小さな棟(増築?)が続きになっています。

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北側。隣接していた農林中央金庫 大分支店が移転してコインパーキングとなったため、全面とも外部から見えるようになりました。中庭に面した部分にも柱型が確認できますが、わざわざ裏側まで付け柱で飾るとも思えないので、もともと柱自体が出張った構造ということなんでしょうか。

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北端部は書庫のようなスペースだったのか、小さな窓が3層分。これによって全体の統一感は崩れているものの、隣にある階段室の窓の配置を工夫することで、かえって小粋なデザインに仕上がっています。端正な縦長窓にポツ窓が加わり、一粒で二度おいしい(?)建物といった感じです。

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再び正面。外壁は現在吹き付けタイルとなっていますが、意匠の造形などから推測するに当初もモルタル系(人造石洗い出し等)で、大まかなイメージはそれほど変わっていないものと想像します。逓信建築の特徴をよく残している上、大分県内では現存最古級のRC建築と思われるので、できれば今後とも使われ続けてほしい建物です。

以上、NTT大分支店別館(旧 大分郵便局電話分室)でした。


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▲NTT西日本 大分支店府内ビル(旧 日本電信電話公社大分電話局/1957年/RC4、増築/設計電電公社建築局/施工佐伯建設工業)

ついでに、周辺の関連する建物を3件ほど取り上げておきます。まずはNTT府内ビル。電話局の自動改式に伴う新局舎として1957(昭和32)年に竣工したものです。

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旧局舎=現別館と絡めて。国道197号(昭和通り)に面した事務棟、裏手の機械棟など3~4棟から構成され、事務棟1階には窓口の跡?も見られます。よってこの府内ビルが本館に当たるのかと思いきや、公式サイトによると支店の所在地は約1キロ東の長浜ビル(旧大分電報局・大分総合局)となっていました。

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事務棟の脇にある「電信電話発祥記念碑」。

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▲大分中央郵便局(旧 大分郵便局/1964年/RC-1+4、増築/設計郵政大臣官房建築部/施工佐藤組)

次に、大分中央郵便局。もと大分郵便局として1964(昭和39)年に新築移転したもので、NTT府内ビルと同じく昭和通り沿い、約100メートル西にあります。後年に5階が増築されていますが、当初の郵政建築スタイルをよく留めた局舎です。

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▲大分銀行本店(1966年/SRC-2+8/設計日建設計工務/施工竹中工務店)

そして郵便局の旧局舎跡地に建つ、地元地銀の大分銀行本店。写真は中央通り(旧電車通り)側ですが、昭和通り交差点に面した角地に位置しており、現局舎とも一応隣り合っています。庇の出は浅いものの、どことなく郵政・電電建築に通じる外観ですね。

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右隣の伊予銀行との間を進むと、NTT別館へと戻ってきます(写真左奥が大分銀行本店)。最後に、これらの位置関係をまとめると以下のマップの通りです。




【撮影年月】
 2013年9月、2014年1月、2017年3月

【参考文献・リンク】
『大分市誌』伊藤正男/全国市町村誌刊行会/1937年(国立国会図書館デジタルコレクション
『電信電話事業史 第5巻』日本電信電話公社電信電話事業史編集委員会/電気通信協会/1960年
「黎明期の建築家たち:創造をはじめた岩元禄」神代雄一郎
 ※『新建築』1962年3月号 pp.175-177
『郵政百年史資料 第27巻:建築史料集』郵政省/吉川圭三/1971年
『九州の電信電話百年史』日本電信電話公社九州電気通信局/電気通信共済会九州支部/1971年
『大分銀行百年史』大分銀行百年史編集委員会/大分銀行/1994年
「建築家上浪朗の逓信局舎建築作品に関する考察:広島郵便局電話分室と広島逓信局庁舎建築を中心として」李明、石丸紀興/2006年
 ※『日本建築学会計画系論文集』第610号(J-STAGE
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電話局の写真館 > NTT大分支店別館
NTT西日本 > 支店情報 > 大分支店(公式HP)
尼崎市立地域研究史料館 > PCD > 尼崎郵便局電話分室 (新築並ニ交換方式變更記念)
佐伯建設 > 100年への歴史 ~激動の時代~
電報電話局(Wikipedia)

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