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2017/10/14 (Sat) 09:00

別府市南部児童館


別府市南部児童館(旧 逓信省別府郵便局電話分室)
大分県別府市末広町1-3/1928年/鉄筋コンクリート造2階建
設計:吉田鉄郎(逓信省経理局営繕課) 施工:金子仙吉(金子組) 備考:国登録有形文化財

逓信建築シリーズの最終回。大分市のお隣にある温泉都市・別府より、別府市南部児童館をご紹介します。別府郵便局の電話分室として1928(昭和3)年に竣工したもので、これまで取り上げた門司鹿児島大分の3局舎と同じく、共電式という電話交換方式の導入に伴って建てられました。

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共電式の概要について、いつもと同じく『九州の電信電話百年史』の解説を引用します。ちなみに別府における共電改式は、九州では福岡・門司・鹿児島・長崎・大分・八幡・熊本に続いて8番目。その後、戦時中に中断されるまで飯塚・直方・中津と続き、また大牟田・久留米・小倉・福岡ではいち早く自動式交換機が導入されています。

電話交換の初期の方式は磁石式で、加入者電話機には個別に送話用の電池や信号発電機などが備えられるため、その費用が高く、また多数の宅内に分散しているため保守に多くの人手を要し、不経済であった。これらの不利を除くため、改良されたものが共電式で、加入者電話機には送話機・受話器・電鈴など通話と信号に必要な機器だけとし、送話電池や信号用電源は各加入者が共用する大容量のものを交換局内に設備した。これにより、取扱いの簡便、通話の明りょう、安定、取扱能率の向上、回線収容能力の増加など、磁石式に比べて画期的な改良がなされた。

※『九州の電信電話百年史』243・244頁より引用

年月日事項
1909 (M42) 02.16別府郵便局 電話通話事務開始
06.16電話交換業務開始
1928 (S03) 12.20電話分室局舎新築(南町2266の1)
12.23共電改式
1947 (S22) 12.11別府電話局 開局
1963 (S38) 07.20局舎新築移転(別府太呂辺2095の1)
1964 (S39) 03.01別府電報局と合併し、別府電報電話局が発足。併せて自動改式
1965 (S40) -- . --別府市が旧局舎を買収し、市役所別館となる
1991 (H03) 04. -- レンガホール 開館
1996 (H08) 07. -- 南部児童館 開館
2003 (H15) 04. -- 南部子育て支援センターわらべ 1階に開館
※前掲書「機関別沿革」、現地解説板等より抜粋・作成

施設の主な沿革は以上の通りです。戦後間もなく電話局に昇格しますが、1963年には電報局との合併と自動改式に先立ち、約1キロ西の新局舎(RC5/施工銭高組、写真)へ移転。その後、市が買収して市役所の別館として利用、91年に改修のうえ「レンガホール」としてオープンし、96年に南部児童館となりました。2003年には子育て支援センターが館内に設置され、現在に至ってます。

なお、電話分室として竣工した当時はあくまで別府郵便局の一部門であり、現地解説板の “旧逓信省別府電報電話局” や、文化遺産オンラインの “旧別府郵便電話局電話分室” といった記述は正確性に欠けます。特に後者に見られる “郵便電話局” ですが、そのような機関自体そもそも存在しません(郵便電信局や電報電話局はありましたが)。恐らく登録文化財への申請時に誤記があり、それがそのまま通ったのではないかと想像しますが……結果的に誤った情報を広めてしまっている訳で、ちょっとどうなんだろう、と思います。

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設計者は逓信省営繕技師の吉田鉄郎。門司の局舎を手掛けた山田守とともに、逓信省や当時の日本を代表する建築家として知られています。氏は同時期に別府市公会堂(写真)の設計も手掛けていますが、公会堂が表現主義色の強いデザインであるのに対し、こちらは街中にあるオフィスという施設の性格も影響してか、比較的装飾の少ない外観です。そのため公会堂と併せて、表現主義からモダニズムへの移行過程を示す存在とも位置付けられています。

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それでは外観を見ていきましょう。構造は鉄筋コンクリートですが、外壁仕上げには煉瓦タイルや石材が用いられ、一見するとクラシカルな雰囲気です。

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一方、ひときわ目を引く正面玄関(東面)上部のバルコニーは、煉瓦を一段ずつ迫り出させたような独特な造形です。他にも意匠的な形状の雨樋など、全体としては大人しめながら、一部に表現主義的なデザインが見られます。

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やや鋭角の南東角。角地に建つ概ねL字型の平面、垂直性を強調した立面など、基本的な構成は前回までの3局舎と同様です。

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南面。こちら側にも出入口(通用門×2)がありますが、いずれも開口部は半円アーチで、直線的な外観におけるアクセントとなっています。

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袖塀に設けられた通用門。建物本体と同じ煉瓦タイルで仕上げられており、何となく可愛らしい佇まいです。

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こちらは建物内部の通用門。入って左手の守衛室?や、天井の繰形(モールディング)など、当初の雰囲気をよく留めます。

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中庭側。塔屋や便所などの突出が見られるものの、立面のデザインや外装材はファサードと同一に仕上げられており、その点で前回までの3局舎とは全く趣を異にしています。裏側にあたる部分ではありますが、ある意味この建物の持つ大きな特色かもしれません。

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丸窓やパラペット上部のコーニス(というか笠石?)のS字曲線も良い雰囲気。

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内部も少しばかり紹介します(許可を得て見学・撮影)。

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入った所で見上げると、天井に何やら意味ありげな窪みが。ちなみに旧 下関電信局電話課でも天井に開口(写真)があり、交換機の搬入・設置に使われたそうなので、これも同じような役割があったものと思われます。

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2階多目的ホール(交換室跡)。天井は少し下げられていますが、窓はほぼ当初のままのようで、上げ下げ式のスチールサッシや、防火用のシャッター?が見られます。

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扉や階段も重厚な雰囲気を残しています。もちろん大部分はきれいに改装されているものの、窓格子のデザイン一つとっても分かるように、歴史的建築物への配慮や敬意が随所に窺えました。これからも別府市民に親しまれる建物で在り続けてほしいですね。

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以上、別府市南部児童館(旧 別府郵便局電話分室)でした。最後に、見学・撮影を快諾してくださった職員の方に、改めてお礼申し上げます。


【撮影年月】
 2011年10月、2017年3月

【参考】
『九州の電信電話百年史』日本電信電話公社九州電気通信局/電気通信共済会九州支部/1971年
別府市HP > 別府市南部児童館別府市の概要(PDF)
建築マップ > 別府市児童館
文化遺産オンライン > 別府市児童館
 現地解説板

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