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2017/12/23 (Sat) 09:00

JR油津駅


JR九州 油津駅舎(旧 鉄道省油津駅舎)
宮崎県日南市岩崎2丁目13-3/1937年/木造平屋建

今回はJR日南線(南宮崎~志布志)の油津駅をご紹介します。宮崎県南部にある人口5万余りの小都市、日南(にちなん)市の主要駅の一つ。同市の油津(あぶらつ)地区の西側に位置し、周辺には商店街や百貨店、銀行支店などが立地します。駅舎は増改築やリニューアルが行われていますが、1937(昭和12)年の開業時に建てられたものです。

もともと当駅を含む区間は旧志布志線(西都城~志布志)を延伸する形で建設され、その後1963年に日南線の開通に伴って同線へ編入されました。両路線ともいわゆる赤字ローカル線であり、志布志線は国鉄末期の87年に廃止。一方、日南線については一部区間が並行する国道から離れており、代替交通機関の確保が難しいため、運よく廃止を免れて現在に至ります。

もっとも、一旦存続したとはいえ厳しい状況に変わりはなく、収支改善や利用促進は依然として大きな課題です。JR九州は2009年に観光特急「海幸山幸」を導入、また沿線自治体も昨年に上場した同社の株式を取得するなど、路線維持に向けた取り組みが続いています。

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そんな中、先日には市民有志による、とあるプロジェクトが報じられました。同市がプロ野球・広島東洋カープのキャンプ地であること、また油津駅がメインスタジアム(天福球場)の最寄り駅であることにちなみ、“油津駅の駅舎をカープ色の真っ赤に塗り替えよう!” というものです。

 広島東洋カープのキャンプ地、宮崎県日南市にあるJR日南線の油津駅が来年2月4日から赤く染まり、愛称も「カープ油津駅」になる。地元からカープを応援しようと市民有志が提案。乗客が減っている日南線を盛り上げたい、との願いも込められている。
 カープは今季、大差で2年連続のセ・リーグ優勝を果たしたが、クライマックスシリーズで3位の横浜DeNAベイスターズに敗れた。そこで、カープファンの市民有志が「来年こそは日本一を狙う。その気持ちを日南から表現しよう」と、白が基調の駅舎を赤く染めてしまうことを発案。ファンや観光客の名物スポットになれば、存続の危機にある日南線の利用推進にもつながると考えた。JR九州も快諾した。(後略)

朝日新聞デジタル > 駅舎赤く染め「カープ油津駅」に JR九州も快諾 宮崎(2017年12月9日配信)より引用

赤色といえばJR九州のコーポレートカラーもそうですが、列車の車体色には度々採用されてきたものの、駅舎では景観への配慮もあってか、あまり例がない気がします(美咲が丘と改装前の鹿児島中央ぐらい?)。市民の広島カープに対する思い、そして市民とJR双方の「日南線を盛り上げたい」という気持ちがあるからこそ、実現できることかもしれませんね。


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という訳で、塗り替え前の現在の(正確には昨年4月の)様子を見ていきましょう。線路の北東に並行して建つ横長の平面に、緩勾配の寄棟屋根が載った木造平屋建て。正面右手に玄関を設け、右端に待合室を、左半分に窓口や事務室を配します。

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ウィキペディアより

開業当時の様子との比較。当初は6列・4列・2列と並んだ窓の垂直性と、庇・腰壁の水平性との組み合わせが印象的で、中々モダンな外観だったようです。現在は屋根材の葺き替えや外壁・窓の改修などにより、すっかり様変わりしていることが分かります。

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玄関ポーチは当初片持ち式でしたが、支柱と勾配屋根が追加され、ほとんど原型を留めていません。また、左手前に張り出した箇所は後年の増築です。

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外壁仕上げも恐らく後年の改装で、アクリル製の建物財産標はそのとき交換されたものでしょう。

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窓も隣と繋げて拡張したり、塞いだりと大部分が改修済み。腰壁の横目地も塗り込められており、当初のファサードに見られた特徴はほぼ失われています。

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一方、内部はかつての雰囲気を比較的留めていました。コンコースは天井が高く開放的で、地域の玄関口らしい風格を感じさせます。

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改札を抜けて構内へ。ファサード側では塞がれていますが、こちら側は4列の採光窓が残っています。

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構内から見た全景。

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古レールを再利用した下屋。

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改札口。待合室には当初の縦長窓が僅かに残っています。上げ下げ式で窓枠は木製、横桟のみのシンプルなデザインです。

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終わりに駅舎以外の写真もいくつか。構内は島式ホーム1面2線ながら、かつて貨物支線(記事末尾リンク参照)が分岐していた名残で広々としています。ホームには観光特急・海幸山幸が留置中。終着の南郷駅の構造上、一旦油津へと引き返してから復路の出発時刻まで待機するのだとか。

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駅舎正面に向かって右側にはトイレが、左側には倉庫らしき付属屋があります。目隠し壁や腰回りに横目地が見られることから、いずれも恐らく開業時からのもので、当初は駅舎と同じデザインで仕上げられていたと思われます。

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最後に、駅前の風景。駅を出てすぐ右手には宮崎交通(株)の油津駅前バスセンターが立地します。同社は県内最大のバス会社ですが、かつては鉄道路線も有しており、南宮崎から内海(宮崎市中心部と日南市の中間付近)までを結んでいました。1962年に廃止され、路盤の大半は翌年に開業する国鉄日南線に再利用されています。

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バス路線は鉄道廃止前から存在したのか、代替として新設されたのかは分かりませんが……現在も宮崎市内から日南市内まで、一日10往復ほど運行されています。ちなみに所要時間は片道2時間程度。JRより少し遅く、本数はさらに少なく、快速や特急も無く、車内にトイレもありません。海沿いを走るので眺めはJRよりも良く、個人的にはそれほど退屈しなかったものの、やはり日南まで乗り通す人は多くないのではないかと思います。

少々余談が過ぎましたが、以上、JR油津駅でした。


【撮影年月】
 2016年4月

【リンク】
油津駅日南線宮崎交通線(Wikipedia)
朝日新聞デジタル > 駅舎赤く染め「カープ油津駅」に JR九州も快諾 宮崎
産経WEST > 「ローカル線を守れ」沿線自治体がJR九州株取得、「株主」になり経営合理化を牽制
広島東洋カープ日南協力会
私の16番ゲージ鉄道模型ライフ > 1973~77年 九州旅行から駅舎の写真アルバム その3
きみどりの窓 > 九州縦断?(1)油津支線廃線跡を歩く
かるブロ > 宮崎県営鉄道・油津付近

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