西日本ビル

西日本ビル
福岡市中央区天神1丁目10-17/1954年4月/鉄骨鉄筋コンクリート造、地下1階・地上9階建(塔屋3層)
設計施工:清水建設 ※現存せず
福岡市の中心・天神の明治通り沿い、福岡ビル隣に建つ戦後物件。天神地区における現存最古の高層オフィスビルですが、明治通り再開発の一環で、今後数年以内の解体が予定されています。
(追記)その後2017年に閉鎖され、翌年にかけて解体されました
計画の概要は隣接する福岡日興ビル(カラオケ館天神明治通り店)、天神セントラルプレイス(旧・福岡三和ビル)とまとめて「天神ビジネスセンタービル(仮称)」に建て替えるというもの。開業時期は調整中だそうですが、実施主体である福岡地所はこれらのビルを既に取得しています。
全体的にシンプルで飾り気は少ないものの、角部のアールが美しく素朴ながら味のあるビル。
アイボリーホワイトの小口タイルに、整然と並ぶ横長の大きな窓が特徴です。
もうすぐ築60年ということで老朽化が進んでおり、開口部には鉄骨を組んだ耐震補強。
明治通りから見ると単なる箱型のビルですが、奥には塔屋が立ち上がっています。
市役所前から裏側を望む。ちなみに手前の建物はジュンク堂書店などが入居するメディアモール天神(MMT)。上層階がホテル・下層階が商業フロアの天神東急プラザとして開業し、ビブレ2を経て現在に至ります。
天神ビブレとMMTの間から。
塔屋の詳細。路地側は階段室、もう半分はエレベーターです。
この辺りまで近づいて来ると、建物裏側の様子が辛うじて覗えます。
道路に面した部分は大きな横長窓と角部のアールがモダンな印象ですが、小さな縦長窓の並ぶ裏側は戦前のビルディングを彷彿させるレトロな雰囲気ですね。
詳細。斜めに窓が並んでいるあの部分も階段室でしょうか。
裏側の壁面は道路側と異なる質感です。道路側は小口のタイルでしたが、こちら側は長手のタイルを塗り込めているようでした。
1階の大部分は銀行と店舗であり、ビル玄関は明治通り側ではなくこちらにあります。
ビル玄関。渋い書体の「西日本ビル」の文字が金色に輝きます。
玄関脇の銘板。こちらもたぶん同じ書体。
玄関はちょうど塔屋の根元部分にあたるので、入ってすぐにエレベーターホールと階段室があります。基本的に内部は改装が重ねられており、少々狭苦しく感じる以外は現代的なオフィスビルと大差ありません。
しかし、ほぼ原形を留めていると思われる階段室には昭和戦後のモダンな雰囲気が色濃く残っています。この写真は地階へと続く部分でかなり手が加えられていますが…
1階から上はこの通り。手摺までコンクリートで仕上げた重厚な造りでありながら、柔らかな曲線を描いています。
うねる手摺に合わせ壁面も曲線を描いており、窓から差し込む薄暗い光によって生み出される陰影が絶妙。
そこから下を覗き込むとこんな感じ。踊り場で1回、EVホール側で2回折れ曲がり、途切れることなく1階まで降りていきます。
ジッと見ていると何だか奥まで吸い込まれそうな、不思議な気分になりますね。というか実際これだけの隙間があると、途中で引っかからなければ1階まで転落できそうです(しませんけど)。
何はともあれこの曲線美。いい仕事してますね~。
裏側はスパッと切られていますが、これもまた乙な造形です。同時期のビルに多く見られる角張った木製手摺をもつ階段も戦後のレトロ成分として好きですが、このようにモダニズムを地で行くような素晴らしい階段は福岡市だとなかなか珍しいんじゃないでしょうか。この空間がビルとともに失われてしまうと思うと、何とも寂しい気持ちになりますね。
所変わって地下1階。戦後のオフィスビルでは定番ともいえる地下街が設けられています(正確には地階に商業テナントが入居しているだけですが)。
テナントはこれまた定番の婦人服店・飲食店中心の構成になっていますが、MMTや地下鉄天神駅と接続していることで天神地区の大規模な地下空間の一角を担っています。そういう意味では、本来の意味での地下街に近いかもしれませんね。
最後に夜景。
(最終更新:2018年9月)
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